研究課題/領域番号 |
18K09897
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
小笠原 正 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (10167314)
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研究分担者 |
柿木 保明 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10420762)
吉田 明弘 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20364151)
長谷川 博雅 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (60164828)
岡田 芳幸 広島大学, 病院(歯), 教授 (70566661)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経管栄養 / 剥離上皮膜 / 次世代シーケンス / 口腔内細菌叢 / 咽頭細菌叢 / 要介護高齢者 |
研究実績の概要 |
2019年度は、「口腔環境毎の口腔と咽頭の細菌叢の全容解明」を目的に経口摂取者と経管栄養者の口腔と咽頭の細菌叢の解明について検討した。経管栄養者20名と経口摂取者19名の要介護高齢者を調査対象者とした.経管群は、口蓋と咽頭において経口群よりも多様性が有意に低く、経管群の細菌は偏っている傾向が示唆された。また口蓋、舌、咽頭の細菌叢の多様性は、経管群と経口群のそれぞれ有意差が認められなかった。経管群は、口蓋,舌,咽頭で好気性菌が経管群より有意に多かった。通性嫌気性菌は,舌と咽頭で経管群に有意に多く認めた.経管群における口蓋,舌,咽頭の構成比率は共通し、Neisseria属、Streptococcus属,Rothia属が上位を占めた.各部位における2群間での主成分分析の結果、いずれの部位でも「経管と経口」の要因が最も関連性が高かった.つまり口腔と咽頭の細菌叢を規定するのは「経口と経管」であることが示唆された。 経管栄養者17名の全身疾患、年齢、意識障害、残存歯、う蝕、歯周疾患、剥離上皮膜などの項目と誤嚥性肺炎・発熱との関連について検討した結果、唯一剥離上皮膜の存在が誤嚥性肺炎・発熱と関連がみられ、剥離上皮膜が発熱リスクになりうることが示唆された。 経管栄養者を剥離上皮膜の有無で細菌叢を比較検討した結果、313菌種が検出され、剥離上皮膜群に有意に多く認められたのはN. flavescens、S.agalactiae、F.nucleatum subsp. Vincentiiであった。N. flavescens、S.agalactiae、F.nucleatum subsp. Vincentiiでは、口腔乾燥と、Streptococcus属は発熱と関連が認められた。細菌叢を規定するのは、剥離上皮膜の存在だけでなく、剥離上皮膜と口腔乾燥という要因が関連し、発熱リスクの一つであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、調査対象者数を増やすために経口摂取者19名、経管栄養者20名の調査を実施した。「2.各口腔内環境の細菌叢と比率から感染リスクを評価」と「3.口腔と咽頭の細菌叢と既存疾患との関連」について分析を進めることができた。その結果を関東細菌学会では「経管栄養患者における剥離上皮膜と全身疾患との関係性」、日本摂食嚥下リハビリテーション学会と日本障害者歯科学会において「経管栄養患者における剥離上皮膜と口腔細菌叢-次世代シークエンスによる解析-」を報告した。さらに経口摂取者と経管栄養者の舌、口蓋、咽頭の細菌叢の比較について日本障害者歯科学会へ投稿した。現在、既存疾患などの患者背景と発熱リスクについて執筆し、6月までには投稿完了する予定である。調査は完了し、概ね順調である。今年は、調査したデータをもとにさらなる分析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
データ採取は完了した。今年度は、様々な角度から分析を進める予定である。「1.口腔環境毎の口腔と咽頭の細菌叢の全容解明」は、論文投稿完了し「3.口腔と咽頭の細菌叢と既存疾患との関連」は論文執筆中であり、「2.各口腔内環境の細菌叢と比率から感染リスクを評価」は、分析が完了している。今年度は、「2.各口腔内環境の細菌叢と比率から感染リスクを評価」を論文執筆する。さらに「4.粘膜ケア(口腔粘膜の清拭と保湿)による口腔の剥離上皮膜形成者と咽頭付着物のある者の口腔と咽頭の細菌叢の変化」について次世代シーケンス解析を行い、統計処理したうえでまとめていく予定である。そのためには、時間の確保と人材がポイントになるので、科研費のための期間を設定し、効率的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費がわずかに安くなり、当該助成金627円が生じた。投稿料、学会発表などで今年度分と合わせて使用していく予定である。
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