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2019 年度 実施状況報告書

包括的糖代謝プロファイリングによるScardoviaの齲蝕関連因子の特定

研究課題

研究課題/領域番号 18K09905
研究機関東北大学

研究代表者

安彦 友希  東北大学, 歯学研究科, 助教 (00470170)

研究分担者 高橋 信博  東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード糖代謝 / う蝕
研究実績の概要

Scardovia wiggsiaeは、最近の研究で重度の早期小児齲蝕(Early Childhood Caries:ECC)や青年期における白斑齲蝕病変から検出されており、新たな齲蝕関連細菌として注目されている。Scardovia属はフルクトース6リン酸経路(F6PPK shunt)という特有の糖代謝経路を有することから、従来の齲蝕関連細菌とは酸産生能や代謝産物、さらにはフッ化物に対する感受性等、糖代謝の性質が異なることが予測される。そこで実際の口腔を模した環境でS. wiggsiaeの糖代謝の性質を明らかにし、その齲蝕関連性について検討した。
S. wiggsiae C1A-55株及びS. mutans NCTC10449株を用い、グルコースを添加した際の酸産生活性測定、代謝産物の同定、またフッ化カリウム(KF)を介在させた場合の酸産生活性の変化について検討した。実験は全て嫌気条件下で行った。
その結果、S. wiggsiaeはS. mutansよりも酸産生活性は低かったものの、pH 5.5の酸性環境においても酸を産生し続けた。またS. mutansよりも高いフッ化物抵抗性を示した。産生された酸の成分は、S. wiggsiaeは酢酸、S. mutansは乳酸がメインであった。S. wiggsiaeが高いフッ化物抵抗性を示した原因として、S. wiggsiaeのF6PPK shuntはフッ化物の影響を受けにくいことが推察された。そこで、メタボローム解析を用いた細胞内代謝中間体の網羅的解析を行なったところ、F6PPK shuntはKFによる代謝阻害を受けずに酸産生能力を維持していることが明らかとなった。さらにS. wiggsiaeの主要な代謝産物である酢酸は、pH の低い酸性環境下では乳酸よりも歯の内部に浸透しやすいことが報告されており、歯を脱灰し、う蝕の進行を早める可能性が高くなると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初は、複数のScardoviaの菌種を使用する予定であったが、先ずは一連の実験系を確立するためにS. wiggsiaeのみで実験を進めることとした。
その結果、Scardoviaのう蝕関連性の一端について明らかにすることが出来たため、国際学術誌「Frontiers in Microbiology」に投稿した。論文は令和2年3月25日付けでオンライン掲載され、研究成果を発信することが出来た。

今後の研究の推進方策

本研究では、グルコースの他に様々な炭素源(糖)を基質とした場合の代謝についても検討する。Scardoviaは、特に小児の齲蝕と関連が見られることから、母乳に含まれるラクトース(乳糖)とオリゴ糖を対象に加えることとしている。オリゴ糖は、口腔レンサ球菌には利用されにくいとされ、齲蝕予防効果があると言われている一方で、腸内の有用菌であるBifidobacteriumを増やし、腸内環境を整える成分として利用されている。Scardoviaは、2002年にBifidobacteriumから独立した菌種であるため、性質が似ていることが予測されることからオリゴ糖を炭素源として利用できる可能性がある。さらに、糖代謝抑制物質の候補としてフッ化物の他に糖アルコールを含む「希少糖」も検討する。希少糖として有名なのはキシリトールであるが、現在は様々な希少糖が合成されるようになり、齲蝕になりにくい食品への応用が期待されている。
以上のことから、Scardoviaの包括的な糖代謝プロファイリング―すなわち、Scardoviaが様々な炭素源(糖)をどのように代謝し酸を産生するのか、またどのような物質により糖代謝が阻害されるのかを知ることで、Scardoviaの齲蝕誘発性を糖代謝の側面から明らかにしたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初は、複数のScardoviaの菌種を使用する予定であったが、先ずは一連の実験系を確立するためにS. wiggsiaeのみで実験を進めた。今後は、他の菌種でも同様の実験を行うと同時に、グルコース以外の糖や希少糖などの酸産生阻害物質を用いて検討することにしている。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動-質量分析装置(CE-TOFMS)、酵素活性測定の実験に用いる試薬は高額なため、次年度に繰り越した使用分を利用する。加えて、旅費を計上していたが、台風の影響や他業務があり行くことが出来なかった。 以上の理由により次年度使用額が生じてしまった。
次年度はこれらの実験を順次行っていく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [国際共同研究] Forsyth Institute/Harvard School of Dental Medicine(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Forsyth Institute/Harvard School of Dental Medicine
  • [雑誌論文] Sugar Metabolism of Scardovia wiggsiae, a Novel Caries-Associated Bacterium2020

    • 著者名/発表者名
      Kameda M, Abiko Y, Washio J, Anne C. R. Tanner, Christine A. Kressirer, Mizoguchi I, Takahashi N
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 25 ページ: -

    • DOI

      https://doi.org/10.3389/fmicb.2020.00479

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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