研究課題/領域番号 |
18K09905
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安彦 友希 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00470170)
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研究分担者 |
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖代謝 / う蝕 |
研究実績の概要 |
Scardovia wiggsiaeは、最近の研究で重度の早期小児齲蝕(Early Childhood Caries:ECC)や青年期における白斑齲蝕病変から検出されており、新たな齲蝕関連細菌として注目されている。これまでの我々の研究結果から、従来の齲蝕関連細菌は糖を代謝し主に乳酸を産生するのに対し、このScardoviaは「フルクトース6リン酸経路(F6PPK shunt)」という特有の糖代謝経路を使うことで酢酸を産生すること、さらにF6PPK shuntはフッ化物による酸産生阻害効果の影響を受けにくく、且つ低いpH環境下でも酢酸を産生し続けることが出来ることを明らかにした。 一方、フッ化物は他の物質と併用することで相乗効果的に酸産生阻害効果が高まることが知られている。そこで、Scardoviaに対しても同様の効果があるかどうかを確認するために、抗菌・殺菌作用を持つことが報告されている「茶カテキン」を用いて検討を行うこととした。比較のため、代表的な齲蝕関連細菌であるStreptococcus mutansを用いて実験を行ったところ、フッ化物単体よりもフッ化物にカテキンを加えたものの方が、酸産生抑制効果が高まることが示唆された。次年度はScardoviaで同様に実験を行う予定である。 またScardoviaが従来の齲蝕関連細菌と異なる点は他にもあり、その一つが培養方法である。ScardoviaはBHIなどの栄養成分の高い培地でないと増殖することが出来ず、さらにそこに血清成分を追加することで十分な増殖が得られる。通常の齲蝕関連細菌とは栄養要求性が異なっており、それが本菌の病原性とも関わっている可能性が考えられる。そこでScardoviaの増殖に必要な栄養源についても検討を行ったが、血清成分の分離・同定作業が難航しており、まだ予備的実験段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに昨年度までにScardoviaの糖代謝機構について明らかにしその齲蝕関連性についての論文が受理(Frontiers in Microbiology誌)されていることから、今年度は本菌の病原性の追求や、齲蝕予防方法の提案など多岐に渡る内容に計画を変更して取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては二つの実験を行うことを考えている。
①フッ化物の効果を高める化合物の検討 フッ化物は他の物質と併用することで相乗効果的に酸産生阻害効果が高まることが知られている。そこで、Scardoviaに対しても同様の効果があるかどうかを確認するために、抗菌・殺菌作用を持つことが報告されている「茶カテキン」を用いて検討を行う。 ②Scardoviaの栄養要求性の検討 ScardoviaはBHIなどの栄養成分の高い培地でないと増殖することが出来ず、さらにそこに血清成分を追加することで十分な増殖が得られる。通常の齲蝕関連細菌とは栄養要求性が異なっており、それが本菌の病原性とも関わっている可能性が考えられる。そこでScardoviaの増殖に必要な栄養源について血清成分の分離・同定作業を行い、どの成分が増殖に影響しているのか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初の研究計画を変更したために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動-質量分析装置(CE-TOFMS)、酵素活性測定の実験に用いる高額な試薬を購入しなかったことや、コロナ禍により学会がオンライン開催になるなど旅費が生じなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は論文投稿の費用や追加実験の際に必要となる試薬などを購入したい。
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