研究実績の概要 |
Scardovia wiggsiaeは、近年の研究で重度の早期小児齲蝕(Early Childhood Caries:ECC)や青年期における白斑齲蝕病変から検出されることが報告された新たな齲蝕関連細菌である。代表的な齲蝕関連細菌であるS. mutansが検出されないECCからScardoviaが検出されることから、ECCとの強い関連が示唆されている。これまでの我々の研究結果から、従来の齲蝕関連細菌は糖を代謝し主に乳酸を産生するのに対し、Scardoviaは「フルクトース6リン酸経路(F6PPK shunt)」という特有の糖代謝経路を使うことで乳酸よりも酢酸を多く産生すること、さらにこのF6PPK shuntはフッ化物による酸産生阻害効果の影響を受けにくく、且つ低いpH環境下でも酢酸を産生し続けることが出来ることを明らかにし、これらを論文として発表した(Kameda, Abiko et al., 2020)。 一方で、Scardoviaが従来の齲蝕関連細菌と異なる点は他にもあり、その一つが栄養要求性である。Scardoviaの培養にはbrain heart infusion(BHI)などの栄養成分の高い富栄養培地が用いられ、さらにそこに血清成分を追加することで十分な増殖が得られる。通常の齲蝕関連細菌とは栄養要求性が異なっており、それが本菌がECCから特異的に検出される要因の一つである可能性が考えられる。そこで最終年度はScardoviaの増殖に必要な栄養源についての検討を行い、いくつかの候補因子を同定することができたため、現在論文投稿準備中である。今後は、同定された因子の作用機序を解明することで、ECCの効果的な治療方法の提案に繋げたいと考えている。
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