研究課題/領域番号 |
18K09907
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大山 篤 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (50361689)
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研究分担者 |
品田 佳世子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (60251542)
木下 淳博 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 教授 (10242207)
須永 昌代 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 助教 (90581611)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産業歯科保健 / 産業保健 / 働き方改革 / Web調査 / 非正規雇用 / 共通リスクファクターアプローチ / ヘルスプロモーション / Web based learning |
研究実績の概要 |
近年、本邦では一億総活躍社会に向けた「働き方改革」が進みつつあり、労働者の働き方が多様化している。現行の産業(歯科)保健制度は、労働者の働き方の多様性(ダイバーシティ)に対応しきれない可能性がたびたび指摘されているが、いまだに具体的かつ有効な解決案は示されていない。そのため、労働者の多様な働き方に対応した新しい産業(歯科)保健制度の構築が喫緊の課題となっている。 2020年度は新型コロナウイルス蔓延のため、学会発表もオンラインや誌上発表となった。労働者の働き方の多様性に関しては、Web調査のデータを用いて、1)正規/非正規雇用労働者の職業生活における満足度に影響を及ぼす要因、2)正規/非正規雇用労働者の有給休暇取得や通院状況、等について分析を行い、第93回日本産業衛生学会(旭川で開催予定であったが、誌上発表)や第79回日本公衆衛生学会(京都で開催予定であったが、オンライン開催)で結果を報告した。 1)では、男女ともに正規雇用労働者における職業生活全体および仕事の内容・やりがいや賃金等の満足度が非正規雇用労働者よりも高い傾向があり、職業生活により充実感が得られている可能性が考えられた。特に男性では安定した雇用や待遇面がより職業生活の満足度に影響し、女性では環境やスキルアップも含めた仕事へのやりがいが満足度に反映されていることが示唆された。 2)では、男女ともに正規雇用労働者の方が有給休暇の平均取得日数が多かったが、女性は有給休暇の平均取得日数から平均通院日数を引いた「通院以外の有給休暇の平均取得日数」が正規/非正規雇用労働者でほぼ同じであり、通院が両者の有給休暇の取得日数の違いに寄与している可能性がある。また、非正規雇用では男性の2人に1人、女性では3人に1人が有給休暇を取得しておらず、有給休暇を取得しにくい雇用条件や職場環境等が職域の健康づくりに影響を及ぼす可能性も考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス蔓延のため、学会発表もオンラインや誌上発表となり、研究に関するディスカッションも行いにくい状況であった。そのため、既存のWeb調査のデータを用いて正規/非正規雇用労働者の働き方や行動等を中心に詳細な分析を試みた。今年度は特に1)正規/非正規雇用労働者の職業生活における満足度に影響を及ぼす要因、2)正規/非正規雇用労働者の有給休暇取得や通院状況、等について分析を行い、順次、論文化を進めているところである。また、新型コロナウイルスの蔓延により、職域の歯科保健活動も影響を受けたため、その状況や対策等も学会やセミナー等で紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、本研究で今まで検討してきた文献やWeb調査のデータから新たな知見をまとめ、学会発表や論文化をさらに進めていく予定である。その上で1)労働者の多様な働き方に対応した新しい産業(歯科)保健対策を検討して提言する総説の執筆、また、2)歯学部の学生や研修歯科医を対象に、労働者の多様な働き方や産業(歯科)保健に関するWeb教材を作成すること、等も引き続き進めていくことを予定している。さらに、新型コロナウイルス蔓延は、労働者の多様な働き方に対応した新しい産業(歯科)保健に少なからず影響を及ぼしている可能性があり、その影響についても十分に検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナ対策などのために多くの時間が割かれ、データ分析および論文化にやや遅れが生じたために、繰越金が生じた。論文投稿等で使用する予定である。
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