研究課題/領域番号 |
18K09915
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50160940)
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研究分担者 |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (00304816)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Streptococcus mutans / 動脈内皮細胞 / gp-340 / 侵入 |
研究実績の概要 |
1. S. mutans MT8148(c)、S. mutans Xc(c)、S. mutans B14(e)、S. mutans P4(e)、S. mutans MT3940(f)、S. mutans OMZ175(f)をそれぞれHAECとMOI=1で48時間共培養した後、培養上清を回収し、gp-340のタンパク発現レベルをドットブロット法で調べた。その結果、対照に比していずれの株も有意に高いgp-340の産生を示した。特にf型のOMZ175、MT3940は高い産生を示した。 2.gp-340のタンパク発現レベルが高かったS. mutans OMZ175を用いて、同様にHAECと共培養した後、上清を回収し、gp-340のタンパク発現を抗gp-340モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットで確認した。その結果、分子量220 kDa以上の高分子領域にこの抗体と反応するdiffuse bandが確認された。 3.S. mutans OMZ175を用いて、MOI=1で8、12,48時間共培養した時のmRNAおよびタンパク発現のタイムコースを調べた。その結果、共培養時間が増すにつれてgp-340の発現は、mRNAおよびタンパクのいずれのレベルも上昇した。また、各時間において、S. mutans刺激サンプルは対照に比して、有意に高い発現レベルを示した。 4.Antibiotic protection assayを用いて、HAECgp-340(+)およびHAECgp-340(-)へのS. mutansの侵入を調べた。その結果、HAECgp-340(+)に比べてHAECgp-340(-)へは、約2倍量の菌が侵入することが認められた。さらに、唾液より精製したgp-340を反応系に加えて、S. mutansのHAECgp-340(-)への侵入に及ぼす影響を調べたところ、gp-340の用量依存的にS. mutansの侵入が抑制されることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の計画に沿ってほぼ順調に実験を行うことができた。これまで、S. mutansの刺激によりHAECからgp-340 mRNAが誘導されることを確認していたが、タンパク発現を確認することはできなかった。今回、ドットブロットアッセイの検出感度を上げることにより、培養上清中のgp-340タンパクを定量することに成功した。また、ウエスタンブロットによりこのタンパクがgp-340であることを確認した。その後、S. mutans各血清型菌株の刺激によるHAECからのgp-340発現量の比較、代表菌株を用いての遺伝子およびタンパク発現のタイムコースを調べた。さらにsiRNAを用いてgp-340の産生を抑制したHAECを作製し、gp-340がS. mutansのHAECへの侵入に及ぼす作用を確認することができた。 これらの理由から、進捗状況としてはおおむね順調であり、次年度に向けて実験を進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、S. mutansのHAECへの付着に及ぼすgp-340の作用を確認する。HAECgp-340(+)およびHAECgp-340(-)へのS. mutansの付着を、免疫染色の後、蛍光顕微鏡や共晶点レーザー顕微鏡観察で調べる。また、付着菌数を培養法で定量する。 次にHAECgp-340(+)およびHAECgp-340(-)をS. mutansと共培養し、培地上清中に含まれる炎症性サイトカインをELISA法で定量する。同様にして、HAEC表面に誘導される細胞接着因子をcell ELISA法で定量する。 さらにHAECからのgp-340誘導に関与するS. mutans菌体成分の分離精製に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で明らかにする予定であったgp-340の産生がS. mutansのHAECへの付着に及ぼす影響を確認できなかった。当該研究に用いる予定の消耗品費を使用しなかったため、次年度使用額が生じることとなった。
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