研究実績の概要 |
透析患者の主な死因は心血管疾患と感染症(肺炎など)である。特に心血管疾患はわが国での死因の第一位を占める重要な疾患である。心臓と腎臓は体液調節に関して密接な関係があり、いずれかの臓器に障害が起ると、もう一方の臓器に機能低下が起こる。このような機能的連鎖を「心腎連関」と呼ぶ。歯周病は心腎連関に共通する基盤病態であり、心腎連関を進展させると考えられている。近年、歯周病が透析患者の生命予後に与える影響について国内外で評価された(Iwasaki et al. J Clin Periodontol 2017など)。しかしながら、その結果は一致していない。 本研究の目的は、透析患者を対象とした前向きコホート研究を新たに実施し、歯周病が透析患者の心血管死リスクへ与える影響を、特に疾患感受性に関連する遺伝子多型の観点から明らかにすることをある。 2021年度には新型コロナウイルス感染症の拡大により、予定していた調査を中止したため、既存のデータを用いてCOVID-19感染拡大にともなう定期歯科受診の中断と歯周病の関連、セルフレポートによる歯周病診断の妥当性、および睡眠時間と歯周病の関連の評価を行った。その結果は国際学術誌を通じて公表した(Iwasaki et al. Journal of Periodontal Research. 56(6), 1091-1098, 2021; Scientific reports. 11(1), 15078, 2021; Journal of Clinical Periodontology. 49(1), 59-66, 2021)。
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