研究課題/領域番号 |
18K09923
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田中 とも子 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (70307958)
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研究分担者 |
八重垣 健 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (40166468)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 歯周病 |
研究実績の概要 |
歯周病の新たな予防法を開発する上で、バイオフィルムを用いたシミュレーションの活用は研究の効率化につながる。我々は、Red complex3菌種による人工バイオフィルムを用いる実験システムを作り、歯周病原性菌に対する薬剤効果の評価に有用であると報告した。本研究ではこの実験システムを用いて、人工バイオフィルム対する薬剤浸透性の検討を試みた。 使用菌株はPorphyromonas gingivalis (P. g)ATCC33277、Tannerella forsythia (T. f) ATCC43037、Treponema denticola (T. d) ATCC35405、Streptococus gordonii (S. g) ATCC10558である。バイオフィルム形成は、0.1% N-アセチルムラミン酸添加TYGVS 培地を用いて、ヒト唾液による人工ペリクル加工済み容器(蛍光マイクロプレートリーダー測定には細胞培養用96ウェルプレート、共焦点レーザー顕微鏡観察にはラボテックチャンバーカバーグラス)上で行った。はじめにODを1.5に調整したS. gの懸濁液を容器内に各々満たし、24時間培養した。次いで懸濁液を除去し、各ODを1.5に調製したP. g、T. fとT. d懸濁液を容器内に入れ、さらに嫌気条件下(90%N2、5%CO2)で48時間培養し、バイオフィルムを形成させた。このバイオフィルムに各濃度(0~0.09%)に調整したグルコン酸クロルヘキシジン溶液(Ch)を0~10分間作用させた。バイオフィルム構成細菌の生死を蛍光色素染色により測定・3D観察した。 蛍光マイクロプレートリーダーでの測定では、作用時間に関わらず0.09%Chで生菌率が大きく低下していた。また、共焦点レーザー顕微鏡での3D観察では、Chの曝露により人工バイオフィルムの底面-表面の各部分で死細菌の分布が異なることがわかった。 以上のことから今回のシミュレーションにおいて、蛍光色素染色による測定・3D観察は人工バイオフィルムに対する浸透性の有効な評価指標になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は歯周病予防効果が期待される薬剤をバイオフィルムに作用させ、そのバイオフィルムに対する影響について評価する計画であった。効果のバイオフィルムに対する影響評価法についてはある程度確立できたが、グルクロン酸クロルヘキシジンのみしか評価ができておらず、複数の歯周病予防剤候補薬剤について評価するに至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はバイオフィルム形成に必要な細菌の培養量を増やし、より効率よく実験が進められるように工夫する。 また、新たなバイオフィルム薬剤効果測定キットも開発されていることから、その使用を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため研究発表を予定していた学会が誌上開催となり、学会参加の費用が不要になった。また、大学施設への立ち入り時間が制限され、試薬等の消費が少なくなった。 これまでの成果を論文にまとめて、できれば複数の投稿をしたいと考えており、今年度繰り越し金はその費用に充てたい。
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