研究課題/領域番号 |
18K09927
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡田 芳幸 広島大学, 病院(歯), 教授 (70566661)
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研究分担者 |
小笠原 正 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (10167314)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 静脈内鎮静法 / 中心動脈圧 / 圧受容器反射感受性 / 動脈硬化度 / 脈波伝播速度 / 脈波増大圧 / 反射波到達時間 |
研究実績の概要 |
超高齢社会により、内科的疾患を有する高齢者や障害者が歯科を訪れる機会が増えた。特に罹患率が高い循環器疾患をもつ患者は歯科治療時の疼痛や不安により、有害事象を起こしやすい。実際に治療中の偶発症として最も多いのは血圧上昇に起因した循環器イベントであると報告されている。そのため、このような患者では歯科ストレスを軽減し、急激な血圧上昇を抑える目的で歯科治療中に精神鎮静法や全身麻酔法が応用されるケースが多い。プロポフォールは導入、及び覚醒が早く、調節性に富むことから鎮静法や全身麻酔法に広く利用されている。その一方で、プロポフォールはシステマティックな血圧を低下させる副作用がよく知られている。もし、中心動脈圧にも過度の低下が起こると脳虚血、心筋虚血などのリスクが上昇するため、その使用には注意が必要である。ところが、プロポフォールが中心動脈圧に与える影響、低下を起こす機序は不明である。そこで、本研究ではプロポフォール使用時に中心動脈圧がどのような変化をきたすか、中心動脈圧の構成要素である脈波がどのような影響を受けるかを評価する。 当該年度中は、昨年度に検証した「プロポフォールの使用により中心動脈圧はシステマティックな血圧と同程度に低下する」という仮説を臨床の現場で確認した。さらに、中枢性血圧維持機構である圧受容器反射がプロポフォールにより変化するか否かについて検討した。その結果、圧受容器反射感受性はプロポフォールにより低下し、その度合いが大きいほど、中心動脈圧の低下も大きいことを確かめた。 これらの結果は、歯科治療に静脈内鎮静法を応用する場合、前もって中心動脈圧低下やそれに起因する有害事象のリスクを知るための情報となり得る。つまり、術前にそのリスクを回避・低減できるという意味で現在の超高齢社会において、社会的意義が極めて高い成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は概ね順調に進んでいる。当初、計画していた仮説の検証 ①中心動脈圧の低下、②動脈硬化度が高いほど血圧低下が大きい、③脈波伝播速度が速いほど中心動脈圧の低下が大きい、④脈波増大圧の減弱がおこる、⑤脈波伝播速度が低下する、⑥中枢性圧反射感受性が低下する、のうち当該年度に①と⑥を臨床現場で確認した。昨年度に行った①、②、③、⑤の評価と合わせて、すでに5つの仮説の検証が終了した。 今後は④の検証と、昨年度の評価を基に新たに設定した仮説である「反射波到達時間の遅れ」について検証する予定である。新たな仮説が加わったが、測定方法には大きな変更がないため、現在の状況から判断すると測定は停滞することなく行われると予想される。 また、国際学会での発表に関して十分なデータの蓄積ができており、予定通り発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に明らかにした現象(脈波伝播速度が低下する、中枢性圧反射感受性が低下する)に加え、次年度はプロポフォールによる中心動脈圧の低下の原因(機序)について、より詳しく脈波成分を検討する予定である。当初の仮説⑤脈波伝播速度が低下することを確認したことから、今後は新たに設定した仮設⑦反射波の中心動脈への到達時間がプロポフォール使用前に比較して遅れることを測定結果より確かめる。その後、当初の仮説④増大圧が減弱するについて、その機序を検証する。つまり、プロポフォールの使用中は脈波前方成分の収縮期に重なる反射波が、前方成分のピーク発生以降の低下期に到達する(遅れる)ため増大圧が減弱する、という現象をアルゴリズムにより作成した仮想脈波上で評価していく。 上記の仮説の検証によって得られた成果は国際学会で発表し、専門家にご意見をいただく。その後、専門家から得た意見を参考に脈波解析を追加し、国際誌へ投稿、発表する。国際誌の発表を介して、本研究から得られた情報を社会還元していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は臨床上プロポフォールを用いて治療を行った患者を研究対象者として、処置中に計測した生体情報を使用して解析したため、当初予定していた研究対象者への謝金の支払いが不必要となり、その予定額分が未使用となった。しかしながら、翌年度は通常の臨床で用いる生体モニターに追加して、プロポフォール使用時の脈波を解析するために連続血圧計を用いて血圧測定をする予定である。そのため、研究対象者に対して新たに謝金が発生することから、当該年度に発生した次年度使用額はこれに充てる。また、最終年度は国際学会での発表、および国際誌への論文投稿を予定しているため、翌年度の支払い請求額と合わせ旅費、学会参加費、投稿費用として使用する。
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