研究課題
超高齢社会である現在、基礎疾患を有する患者が歯科を訪れる機会が増えた。特に循環器疾患の罹患率は高く、歯科治療時の疼痛や不安による有害事象が起こりやすい状況となっている。実際に歯科治療中の偶発症として最も多いのは血圧上昇に起因した循環器イベントである。そのため、このような患者では歯科ストレスを軽減する目的で精神鎮静法や全身麻酔法が応用されるケースが多い。使用薬剤の中でもプロポフォールは導入及び覚醒が早く、調節性に富むことから鎮静法や全身麻酔法に広く利用されている。一方で、プロポフォールはシステマティックな血圧を低下させる副作用がよく知られている。もし、中心動脈圧に過度の低下が起こると脳虚血、心筋虚血などのリスクが上昇するため、その使用には注意が必要である。ところが、プロポフォールが中心動脈圧に与える影響、中心動脈圧の低下を起こす機序は不明である。そこで、本研究ではプロポフォール使用時に中枢性血圧調節機構の圧反射感受性と中心動脈圧の器質的構成要素である脈波がどのような影響を受けるかを評価した。昨年度までに「プロポフォールの使用による血圧低下は末梢動脈よりも中心動脈において大きい」ことを確かめ、その要因として「中枢性血圧維持機構である圧受容器反射の機能がプロポフォールにより低下する」という仮説を検証した。その結果、圧受容器反射感受性が低くなるほど、血圧低下が大きくなることを確かめた。これに加え、当該年度はプロポフォール投与中に中心動脈の脈波形成因子を解析した。その結果、プロポフォールの投与により収縮期血圧の決定要素である脈波増大圧が低下することを発見した。また、この低下は心収縮に伴って発生する脈波前方成分に合成する反射波の到達の遅れが原因であることを明らかにした。さらに反射波の到達の遅れは、血管拡張による反射距離の延伸よりも、脈波伝播速度の低下が強く関与することを確認した。
https://www.hiroshima-u.ac.jp/en/dent/research/lab/hospital/Special_Care_Dentistry
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有病者歯科医療
巻: 30 ページ: 88-95
広島大学歯学雑誌
巻: 52 ページ: 1-6