研究課題/領域番号 |
18K09928
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
池尾 隆 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (40159603)
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研究分担者 |
堂前 英資 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50454559)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
前年度までの検討でMMP阻害剤として広く用いられているGM6001が、破骨細胞分化を促進することが確認された。GM6001による破骨細胞のタンパク質分解抑制作用が破骨細胞分化を促進したと考え、酵素阻害のスペクトラムの異なる阻害剤をを用いて破骨細胞分化誘導実験を行なったところ、いくつかの阻害剤 (Actinonin, Bestatin, Amastatin, MMP inhibitor 3 等)で破骨細胞分化促進作用が確認された。これらはいずれもヒドロキサム酸系阻害剤であった。破骨細胞分化促進作用のメカニズムを検討するために、破骨細胞分化に必須の転写因子NFATc1の発現にこれらの阻害剤が及ぼす効果を検討したが、ヒドロキサム酸系阻害剤の有無による差はなかった。したがってRANKLによるNFATc1誘導に至る破骨細胞分化誘導初期ではなく、その後の細胞間融合などの分化誘導後期に阻害剤による分化促進作用が生じたと考えられた。最近、DPP阻害剤がNRP1インフラマソームの活性化を促進することが明らかとなった。DPP8/9はNRP1インフラマソームと結合しNRP1インフラマソームのオリゴマー化を防いでいるが、阻害剤はこの相互作用を抑制し、NRP1インフラマソームの活性化を誘導する。酵素の阻害剤に対する作用が酵素活性の阻害にとどまらず、酵素が相互作用するエフェクター分子の活性にも影響を及ぼす可能性を踏まえ、現在ヒドロキサム酸系阻害剤と結合するタンパク質が、分化誘導後期に機能するエフェクター分子の機能に及ぼす影響を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒドロキサム酸系阻害剤は破骨細胞の大型化を促す一方、当初の予想とは異なり、破骨細胞分化の指標となるNFATc1発現やTRAP、αvβ3インテグリンの発現には影響がなかった。そのため、研究があまり進んでいない分化後期のエフェクター分子に及ぼす影響の検討にターゲットを変更し、実験系の確立を模索したため当初の予想よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究があまり進んでいない分化後期のエフェクター分子に及ぼす影響の検討にターゲットを変更した。具体的には破骨細胞融合に重要とされる分子DC-, OC-STAMPの発現・機能に及ぼすヒドロキサム酸系阻害剤の働きを生化学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関のコロナ対策に伴う研究施設の一時的な利用制限と、教育業務への緊急的な対応のために、一時的に、研究を中断せざるを得なかったため。次年度使用額は、前年度に行うことができなかったイメージングデータ取得および、フローサイトメトリーに必要な抗体と蛍光色素の購入費用に充てる。
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