研究課題
口腔粘膜における免疫応答の詳細を検討するために本研究を行ってきた。特に、舌下免疫療法や舌下投与ワクチンのメカニズムの詳細を検討するために、舌下粘膜に注目し、免疫担当細胞の存在・分布・移動を検討してきた。定常状態のマウスの舌下粘膜には樹状細胞(DC)の集積(クラスター)が認められた。このクラスターにはDCの他にCD4陽性T細胞が粘膜固有層内に存在する事が判明した。CD4陽性T細胞はDCとクラスター内で接触して存在していた。このCD4陽性T細胞のうち40%以上が制御性T細胞であった。他の組織でも同じようなDCとT細胞によるクラスターの報告はあるが、制御性T細胞がこの様な高頻度で存在する報告はこれまでにはなく、舌下粘膜のクラスターの特徴と考えている。さらに、最終年度となる昨年度は、CD8陽性T細胞もクラスター内に存在する事を確認した。クラスター内のT細胞の内、CD4陽性T細胞が70%近くを占め、CD8陽性T細胞の存在比率は30%程度と少なかった。また、ほとんどのCD8陽性T細胞はクラスター内の上皮細胞層内に存在する事が明らかとなった。この様に、クラスター内でCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の局在が分かれていることが判明した。さらに、CD8陽性T細胞に抗原提示できるXCR1陽性樹状細胞が上皮基底層付近に存在する事、また、制御性T細胞を誘導できるCD11b陽性樹状細胞がクラスターの粘膜固有層に存在することも見いだしている。これらの結果は、クラスター内でのそれぞれのT細胞の調節・維持機構が異なり、棲み分けがあると考えている。さらに、抗原刺激を舌下粘膜に施した場合のクラスターの性状や構成細胞の変化、また、その時の舌下粘膜から所属リンパ節への細胞の移動も検討しており、さらに研究を継続して発展させることにより舌下免疫療法やワクチンの機構解明を目指している。
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