研究課題/領域番号 |
18K09933
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
原 修一 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (40435194)
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研究分担者 |
三浦 宏子 国立保健医療科学院, その他部局等, 部長 (10183625)
小西 由里子 国際武道大学, 体育学部, 教授 (90178294)
山崎 きよ子 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20331150)
川崎 順子 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00389579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者 / 体組成 / 運動機能 / 口腔機能 / サルコペニア / 体重支持指数 / 運動・口腔機能向上 / 中山間地域 |
研究実績の概要 |
宮崎県内A町在住高齢者のうち、体組成分析と運動・口腔機能測定を実施した192名を対象とし、相互関連性を検討した。部位別直接インピーダンス測定法による身体組成分析、Timed Up and Go テスト(TUG)、握力、膝伸展筋力、開眼片足立位保持時間、長座位体前屈距離による運動機能測定、反復唾液嚥下テスト(RSST)による口腔機能測定を実施した。膝伸展筋力を体重で除し、体重支持指数(WBI)を算出した。AWGS(2014)の診断基準に基づき、対象者をサルコペニア群、正常群の他に、診断基準のうち1または2項目(握力+歩行速度、歩行速度+骨格筋量指数:SMI、握力+SMI)に低下を認める4群をサルコペニア予備群とした。各群間の年齢、BMI、運動・口腔機能の各測定値を比較した。 サルコペニア群は39名(20.3%)、サルコペニア予備群は118名(1項目低下71名、2項目低下47名)であった。サルコペニア肥満は、13名(33.3%)に存在した。サルコペニア群は、女性が27名と多く、左右膝伸展筋力・WBI、左脚開眼立位保持時間、長座位体前屈距離において、正常群や1項目低下群と比較して、有意な低値を示した。歩行速度に低下を示す2群(握力+歩行速度低下群、歩行速度+SMI低下群)は、左右共に、WBIは歩行困難を示す0.4未満であり、握力+歩行速度低下群の右側WBIは、正常群と比較して有意に低値であった。サルコペニア群のRSSTは、正常群または1項目低下群と比較し有意な低値を示した。 各高齢者の筋力、肥満度、筋肉量など、各高齢者の特徴にあった健康教室や、日々の活動の推奨、栄養・運動に対する啓蒙が必要と考えられた。また、サルコペニアによる筋量の減少や筋力の低下は、口腔機能にも存在することが考えられ、運動・口腔機能に対する複合的な機能向上プログラムの導入が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A町在住高齢者の身体組成と運動・口腔機能の評価を実施し、かつ、サルコペニアおよびサルコペニア予備群の運動・口腔機能の現状を把握し、対象高齢者において必要な運動・口腔機能向上のためのプログラムのイメージを作ることができた。一方、本研究の実施計画では、面接調査による高齢者の口腔内状況、活動量や活動方法の評価を実施し、高齢者が持つ機能的な問題を抽出する計画であったが、実施できなかった。次年度は継続的にA町在住高齢者の身体組成と運動・口腔機能の評価を実施しサルコペニアおよびサルコペニア予備群の運動・口腔機能の現状を把握することと同時に、生活や運動の実施と継続状態、栄養摂取に関わる質問紙調査を実施し、それらのデータを基に、高齢者が各機能を生活の中で向上させるプログラムと習慣づけ・見守りの方法とICTの利用を含む活動プログラムを提供する。
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今後の研究の推進方策 |
1.A町内高齢者の運動・口腔機能の現状の把握:継続的に、説明の上同意を得たA町高齢者住民を対象に、部位別直接インピーダンス法による身体組成測定、運動・口腔機能測定、活動量や運動、口腔機能に関わる質問紙調査を実施する。活動内容は、Metabolic equivalents(METs)に換算し、一日あたりの平均活動量を算出する。各データを元に、各高齢者をフレイル、サルコペニア、ロコモ、オーラルフレイルの各視点で身体組成と運動・口腔機能との相互関連性を検討する。 2.高齢者住民個々の運動・口腔機能維持向上プログラムと効率的な習慣づけ方法の検討:上記で得られたデータを基に、運動・口腔機能のパターン化を行い、各パターンに対応した日常的習慣、集団で行う、運動・口腔機能維持向上プログラムとその習慣付け方法を、ICTによるセルフケアプログラムも含めて開発する。 3.運動・口腔機能維持プログラムの試験的実施:説明の上同意を得た高齢者20名を対象とし、身体組成・認知・運動・口腔各機能の評価、質問紙を用いた1週間あたりの活動内容、口腔清掃習慣、栄養状態に関する調査を実施する。運動・口腔機能維持向上プログラム、ICTプログラムを、習慣付け・見守りを含めて各高齢者の機能に合わせて提供し、3ヶ月間実施する。終了後に、実施前と同じ測定・調査を実施し、効果について検討する。プログラムと習慣付け・見守り方法の評価・修正を行う。 4.運動・口腔機能維持プログラムの本実施(令和2年度):説明の上、協力が得られた住民に対し、修正したプログラムを習慣づけ・見守りを含め実施する。実施前評価・調査として、住民健診データ、口腔・運動・認知機能、身体組成の測定データを用いる。1年間プログラムを実施し、中間評価として、運動・口腔・認知各機能、身体組成の測定を6ヶ月後に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の三浦が、次年度の第61回日本老年医学会(仙台)への旅費と研究補助者雇用のための人件費として繰越(84,756円)を行ったため。また、研究代表者の原が、110円の繰越を行ったが、次年度は物品費として使用する。
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