研究課題/領域番号 |
18K09938
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤本 善英 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (30338701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医学教育 / シミュレータ |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、我々が開発した新方式シミュレータ「拡張現実聴診教育システム"EARS"(Educational Augmented Reality Auscultation System)」の有用性を検証することである。"EARS"は模擬患者の胸部と診察者が持つ模擬聴診器チェストピースの位置関係をシステムの一部である赤外線カメラが認識し、診察者がチェストピースを模擬患者に接触させた位置、すなわち聴診部位に応じて心音・呼吸音を再生するシステムであり、従来市販されている医学教育用シミュレータとは異なる原理・機器構成により動作する。 本研究の開始に際し、研究過程で支障がないように改めてシステム動作の確認を行った。その結果、研究に際し看過できない不具合が認められたため、当初予定していた研究は延期し、不具合対策を実施した。 具体的な不具合として、当初使用を予定していたシステムでは模擬患者と使用者を上から見下ろすかたちのアームつきスタンドを用意し、アームの先端に位置認識用赤外線カメラを設置していた。その設置方法で、システム開発関係者が使用する際は動作に支障が生じなかった。しかし、本研究の対象である学生・研修医を想定した"EARS"の動作原理に不慣れな不特定多数の人員を対象に動作を確認したところ、対象がシステムを使用する際、模擬聴診器(チェストピース)の持ち方や診察する際の姿勢により、位置認識精度が低下することが判明した。 不具合の対策として、赤外線カメラの位置を模擬聴診器本体の一部に組み込むよう変更した。その結果、対象者の持ち方や姿勢といった位置認識への阻害要素が軽減され、位置検出精度が向上した。なお、対策手法についてはシステム開発担当者が「拡張現実型聴診訓練システムにおける検出精度向上のためのカメラ位置変更の検討」として第18回日本VR医学会学術大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初使用を予定していたシステムの改良を行ったため、本研究での使用前に改良成果を確認するとともに、不具合がさらに認められないか再検証する必要が生じた。そのため、当初予定していた研究とは別に、改良したシステムの評価を行った。 評価は本学におけるPost CC OSCE (Post-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination) のトライアル、NPO法人千葉医師研修支援ネットワーク主催の第3回 Chiba Clinical Skills Boot Camp、さらに医学部生対象の総合診療勉強会「東京どまんなか」で行った。具体的には各イベントにおいてシステム開発担当者臨席のもと、改良したシステムを実際に用いたシミュレーション教育を行い、動作状況を確認するとともに、使用者に対するアンケートを行った。 その結果、改良システムにおいては従来認められた不具合がほぼ解消したことを確認できた。さらに、アンケートの結果ではシステムの学習効果についても好評価を得られた。一方、音質や操作性についてはさらなる改良および検証が必要と考えられた。 これらの評価と並行し、心音については当院循環器内科クリニカルクラークシップに参加した学生を対象にシステムを試用・動作を確認した。さらに、本システムの開発に関連する企業での動作確認も並行して実施した。 以上のような改良型システムの事前評価・動作確認はあくまでシステム自体の動作確認が主目的であり、本研究の主目的であるシステムを使用した教育効果の検証とは異なる。さらに、利益相反に抵触する点もあることから、事前評価結果の公表および結果による本研究プロトコールの見直しは実施しない方針とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は改良したシステムの評価・動作確認を引き続き行う。システムの信頼性を十分確認したうえで、当初の研究プロトコールに則り教育効果の研究を実施する予定である。システム評価・動作確認、および新規に不具合が認められた場合の対策作業は2019年9月までに終える見込みである。 さらに、研究スケジュールの遅延に対しては本研究にて教育効果を評価する対象である本学クリニカルククラークシップ参加学生の実習状況・実習期間を考慮したうえで、可能な範囲で遅延スケジュールの回復を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、拡張現実聴診教育システムによる教育効果を評価・研究する予定であった。しかし、システム自体に不具合が認められたため、予定していた研究を延期し不具合対策を優先した。 研究の延期に伴い、当初請求した経費の大部分を今年度は使用することなく次年度使用額が生じた。 次年度以降は延期していた教育効果評価・研究を再開、さらに遅延したスケジュールを回復して研究実施する予定であり、システムの改善に必要なコンピュータ関連機材の購入や研究協力者への謝金として経費を使用する計画である。
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備考 |
本研究に関連し、医学教育振興財団医学教育研究助成(平成29年度)報告会にて下記発表を行った。発表者名:三浦慶一郎,中山崇,北原秀喜,川田 奈緒子,伊藤彰一,朝比奈真由美,小林欣夫 発表演題:拡張現実聴診教育システムによる教育効果の研究
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