研究課題/領域番号 |
18K09939
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野島 正寛 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (00457699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 臨床試験 / 新薬申請 / 新薬開発 / ベイズ / ベイジアン / FDA / PMDA |
研究実績の概要 |
1.開発成功例の検索:2013-2017年に医薬品医療機器総合機構(PMDA)において新規承認された薬剤に関する審査報告書を調査し、申請に利用された全ての臨床試験の情報を収集している。新規的手法の利用状況を検討するため、PMDAのウェブサイトからダウンロード可能であった160品目の審査報告書、ならびに159品目の申請書概要の臨床試験に関する記述に該当する部分より「ベイズ」の用語を含む割合を検討したところ、薬物動態における利用を除くとそれぞれ2件ずつ抽出された。続いて、同年限において米国FDAで新規承認された薬剤に関するStatistical reviewを”Bayes”の用語で調査したところ、409品目中23件にこの用語が含まれていた(薬物動態における記載を除く)。少なくとも、申請に関わる重要な知見としてBayesian analysisが利用されている割合は5%程度ということかもしれないが、抽出法に問題がないか検討を進める。 2.Clinicaltrials.govの臨床試験登録において臨床試験の抽出を行い、第I相等、承認以前の臨床試験が行われたものの開発中止となっている案件について調査を行っている。2006年以降2014年までに開始されたすべての臨床試験およそ16000を抽出し、現在抗がん剤に関する臨床試験の調査を進めている。該当する承認前第I相試験は約1600であり、第II相が実施されている割合は60%、そのうち第III相試験が実施された割合は43%であった。続く販売・承認を受けたものはそのうち77%であった。あくまでpreliminaryな検討であるが、Paul SM, 2010の報告ではそれぞれ54%, 34%, 70%であり、そう大きな差はなく妥当な調査となっているものと考えている。この調査を基に開発中止案件について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていた検討はおおむね順調に進んでいるが、文献の内容の検討には相当な時間を要するものと考えられ、論文刊行が最終年度終了後となる可能性もあるため。また、新型コロナウイルス感染症の流行による影響も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
1.開発成功例の検索: すでに収集されたPMDA、FDA承認済み新薬の情報について、ダウンロード可能であった申請・審査関連書類をテキストマイニングにより処理し、薬剤名、薬効分類、スポンサー、症例数、相、試験デザイン(3+3デザイン、単群、ランダム化等)、統計手法(ベイズ統計の利用等)、有効性のエンドポイントとその結果、重篤な有害事象発生割合、中間解析の有無と手法などの項目を収集する。 2.開発不成功例の検索: 開発中止となった品目について特定を行い、その後臨床試験情報の収集を試みる。論文化されている場合には論文情報を利用するが、そうでない場合にはClinicaltrials.gov等に記されている情報を利用し、開発成功例と同様の項目を抽出する。 3.統計解析および結果の報告: 主要評価項目は、開発の成功・不成功とし、副次評価項目として、開発が中止となった相を検討する。まず、抗悪性腫瘍用薬剤に対して検討を開始し、その後他の薬効に対して検討を拡張する。各相における成功確率等の記述疫学的検討を行った上で、抽出項目のうち開発成功や、早期失敗・後期失敗などと関連する要因について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(H30年度)に2年目(令和元年度)の予算を繰り入れたための初年度の利用額が大きくなり十分な研究の進捗が認められた。そのため、2年目に必要となる金額は低く抑えられた。最終年度には、論文の刊行や学会参加などやや大きな経費となるため、予算を繰り越すこととした。
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