2020年度には,臨床試験登録サイトClinicaltrials.govに登録された抗悪性腫瘍用薬剤(抗がん剤)に関する第I相試験のデータベース化を完了し(期間:2006年から2014年),同一の薬剤については最も古い試験をFirst In Man試験と位置付け,その後FDAのデータベースを利用し承認の有無について情報を収集,第II相・第III相試験が実施されているかをClinicaltrials.govの臨床試験登録状況により確認した.結果としては,2006-8年に第I相試験が開始された場合,第III相試験終了後に現時点でもFDA(米Food and Drug Administration)未承認の割合は73.8%(11/42),2009-11年では46.6%(31/58),2012-14年では62.7%(28/75)であり,過去の報告とおおよそ一致していた.さらに,今回の調査で最も古い2006年に初めて第I相試験が登録され,1度以上第III相試験が実施された17薬剤のうち,主要評価項目で思うような結果が得られず現在もFDA承認を受けていない12薬剤について開発経緯の詳細を検討した.その結果,第II相とは異なった傾向が出現した例が多かったが,前相から目立った効果が認められないまま第III相に移行した場合もあった.同一癌腫に対し複数試験が実施されその全てで望ましい結果が得られない場合もあり,この場合偶然性の影響は乏しいと考えられることから,もう少し早い段階で開発中止が決断できるような早期相試験デザインが望まれる.また,多くの癌腫に対して断続的に第III相試験が行われながら,10年以上未承認のまま開発が進められていることも珍しくない.期間終了後もデータベース化された情報を統計的に解析し,開発成功および後期相での中止回避に繋がる要因の抽出を進める.
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