本研究の目的は、がん患者や市民におけるがんゲノム医療やがん遺伝子パネル検査に関する懸念や期待等を明らかにし、今後、がんゲノム医療を適切に推進するために必要な社会的基盤等について検討することである。 インターネット調査(量的調査)により、がん患者、がん患者家族、市民のいずれにおいても、がん遺伝子パネル検査の認知度は約2~3割と低いこと、がん患者とがん患者家族は、市民よりもがんゲノム医療のベネフィットを高く認識していること、データベースに登録された個人の検査データの適切な利用や所得による医療格差の拡大について懸念していることが明らかとなった。がん遺伝子パネル検査で見つかる可能性がある遺伝性腫瘍の結果の家族での共有については、がん患者の7割、がん患者家族の8割が共有を希望すると回答した。 がん患者を対象としたフォーカスグループインタビュー調査(質的調査)では、がんゲノム医療の情報提供の方法について、患者向けでは病院内の掲示物、一般向けではテレビ・CM・インターネット政府広報がよいという意見があげられた。がん遺伝子パネル検査のデータの研究・開発への二次利用については、個人情報の適切な取り扱いや漏洩を懸念する意見が多く出されたが、二次利用の意義や重要性を認める発言も見られた。 2022年度は、これまで実施した量的調査と質的調査の結果についてさらに分析し、日本国内のがんゲノム医療をとりまく現状を踏まえて、がんゲノム医療を適切に推進していくための情報提供のあり方や必要な社会的基盤について検討した。
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