研究課題
高齢化と医療費の増大がますます進行するわが国において、健康寿命の延伸と医療費適正化のための費用対効果による医療技術の評価が求められている。脳卒中は発症するとその後遺症により要介護状態となることで、患者本人および家族のQOLを著しく障害し、健康寿命の延伸を阻害する。超急性期再灌流療法である血栓除去術は、急性期脳卒中患者の機能予後を大いに改善させることが明らかになっているが、本邦における費用対効果は未だ明らかではない。本研究では、福岡県下の7つの脳卒中専門病院による多施設共同前向きコホート研究、福岡脳卒中データベース研究を用いて、本邦における超急性期血栓除去術の費用対効果を明らかにする。データベースには急性期脳卒中患者17074名が登録されている。このうち、血栓溶解療法は1422名、血栓除去術は573名に施行されていた。登録患者のデータ収集は、専門の臨床研究コーディネーターにより入力項目を標準化したうえで行った。予後の追跡情報は、脳卒中の予後調査に関して専門的な知識を有する臨床研究コーディネーターにより情報収集しており、追跡率は89%に及んでいる。今年度は、昨年度に引き続き追跡情報の追加収集とデータクレンジングを行った。特に、再灌流療法の適応で治療を行った症例群に対して、対照群として同療法普及前の主幹動脈閉塞例を選択すため、新規項目として情報収集を行っている。再灌流療法は、血管内専門医の増加を含む地域医療体制の整備とともにその施行例は増加傾向にあり、デバイスの進展や治療方法の改善の進化とともにその効果も改善している。そのため、脳血管内治療専門医とととも研究デザイン、方法の検証を行う必要があり、積極的に実臨床における情報を収集している。また、本研究では、各医療機関での再灌流療法の実態をデータベース化し、現在、整備している。
2: おおむね順調に進展している
福岡脳卒中データベース研究における患者登録は2007年6月から2019年9月末までを対象として実施し、データを固定した。また、脳卒中専門の知識を有する臨床試験コーディネーターとともにデータクレンジング、追跡予後情報の追加収集、イベント評価委員会によるイベント判定を継続的に行った。血管内治療の近年の進歩は著しく、デバイスの向上、治療体制の整備が急速に普及しつつある。そのため、脳血管内治療専門医より積極的にその情報を収集し、より精度の高いデータを構築するべく、各医療機関での再灌流療法の実態をデータベース化にとりくむとともに適切な研究デザイン、研究方法を行えるよう吟味している。このように、データ分析を行うための、コホートならびに登録データの質の担保に取り組めており、順調な経過であると考えられる。
臨床データはすでに収集できてはいるが、現時点でもさらなるデータの質の向上のためにクレンジングをおこなっており、引きjavascript:onSave();続き継続する。次にQOLの測定の評価を行うとともに、DPCデータとの突合により費用分析を行う。QOLおよび費用の評価後に、費用対効果の分析を実施する。
年度末に開催される日本脳卒中学会学術総会に関連研究課題を発表し意見交換をおこなう予定であったが、データの更新に伴い研究成果を次年度の学術総会において発表することとなったため、次年度使用額として計上することとした。
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