研究実績の概要 |
1991年6月の雲仙普賢岳噴火の大火砕流から,来年で30年となる。長崎大学精神神経科学教室は,1991年から,地元の自治体ならびに保健所と協力して,被災直後から直近は2015年まで,地域住民のストレス状況のフォローアップ調査を行ってきた。従来は,地域の健康診断会場もしくは,地域の公民館での自治会活動に参加中の住民に対して,アンケートを依頼する方式であったが,今回は,新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から,従来の方式での調査は,困難な状況である。そこで,本年は,各医療機関での,通院中または入院中の患者の診療録を基にした調査を施行する。具体的な調査方法は,現在60歳以上の方で,感情障害,もしくは認知症で治療中の方で,発症や治療経過に雲仙普賢岳噴火災害が影響したと考えられる方を選出する。島原地区以外でも同様の調査を行い,普賢岳災害以外では,長崎原爆,諫早水害,長崎水害などの被災の有無を調べる。その他,現在の状況を調べる。今年度は島原地区の2病院と1クリニックおよび県内の他の地区での3病院との比較研究を行う。カルテの情報を基にうつ症状と認知症症状への災害ストレスの関与を検証することを計画し、長崎大学医歯薬学総合研究科倫理委員会に申請し、承認を得ていたが、2020年秋以降のコロナウィルスの感染拡大を受け、各医療機関の面会や外部からの訪問が長期にわたり制限される事態となり、研究遂行ができなかった。
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