研究課題/領域番号 |
18K09946
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
木下 裕久 長崎大学, 保健センター, 准教授 (10380883)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 災害精神医学 / 噴火災害 / PTSD(心的外傷後ストレス障害) / PTG(心的外傷後成長) / うつ病 / 認知症 |
研究実績の概要 |
1991年6月の雲仙普賢岳の大火砕流から、今年で32年が経過する。長崎大学精神神経科学教室は、1991年から、地元の自治体ならびに保健所と協力して、被災直後から、1996年6月に噴火終息宣言が出るまでの間、被災住民の精神保健的な支援活動を行った。そして追跡調査を継続してきた。研究代表者は、2003年からこの調査に関わり、2005年に被災後15年目の調査を行った。さらに2015年に25年目の調査を行った。これまでの調査は、Weissら(1997)らが、開発した「出来事インパクトスケール改訂版(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)」により測定すると、合計点数25点以上の高得点者の割合が、13年目では、17%であり、この調査の詳細は、研究代表者が2012年に論文として発表した。また15年目では、10%と年々低下する傾向があり、25年目にも同様の傾向が認められた。この結果は、災害から長期経過してもPTSD症状を有する方が存在し、経時的改善がある程度で止まることを示す。その一因として、被災者の高齢化による身体機能の低下や認知機能の低下があるのではないかと考える。今回は、高齢化による認知機能低下などの影響が被災地域住民の現在の精神的問題にどう影響するか明らかにする。そして、現在の認知機能に影響する要因を検証し、災害支援中長期的評価と援助方法を検討したい。従来は、地域の健康診断会場もしくは、地域の公民館での自治会活動に参加中の住民に対して、アンケートを依頼する方式であったが、今回は、新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、従来の方式での調査は、困難な状況が令和5年4月まで続いていた。昨年は、地域住民調査から施設調査への切り替えを行い、研究を前に進めようとしたが、それでも継続は困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年は、地域住民対象の調査から、施設入所者や入院患者へ対象を絞った調査を試みたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、施設、病院での面会制限が続き、実施困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年は、5月8日以降は、これまでの様々な制限が解かれるため、まずは、施設入所者や入院患者への調査を行い。状況に応じて、地域住民への調査も試みる予定である。その際に、WEB調査やオンライン調査など、参加者の負担の少ない調査方法も試みる予定である。長い間実施できないまま、時間が経過しており、参加者の記憶の減衰が懸念されるため、今年度は、できるだけ早い時期に調査が完了するよう調整を進めていきたい。具体的には、6月までに、関連施設に依頼状を送付し、島原地区とそれ以外の県内地区の施設や病院に入っている高齢者の被災体験の有無と現在の認知機能との関連を調査する方針である。また並行して、島原地区とそれ以外の県内地域での、住民の自然災害への意識調査を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年は、地域住民対象の調査から、施設入所者や入院患者へ対象を絞った調査を試みたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、施設、病院での面会制限、外出制限が続き、実地困難となった。令和5年度は、7月より島原地区とそれ以外の地区の施設入所者と入院患者への対面調査を開始する。これにより、調査協力者への謝金と協力施設への謝金、調査対象者への謝金が生じる予定である。また9月より地域住民への意識調査を行う。どちらも12月には調査を終え、解析作業に入る計画である。
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