研究課題
研究の目的は、1)献体を用いたサージカルトレーニング(Cadaver surgical training, CST)を遂行するための医師の卒後研修体制を構築し、維持すること 2)手術手技を写す端末画像が構築できるプログラムの開発 3)これらのCST技術習得支援を動画にていつでも習得できる教材の開発、提供、使用により、正確な手術手技と安全な技術の習得を促進することである。平成31年度のCSTは年間3回とし、以下の日程で開催された。延べ134名の整形外科医が参加し、手術手技の向上、危険部位の確認を行った。平成31年10月5,6日:肩関節手術手技、足・膝関節手術手技平成31年10月19,20日:手・肘関節手術手技、股関節手術手技平成31年11月9,10日:頸椎手術手技、胸・腰椎手術手技
1: 当初の計画以上に進展している
a)人工股関節再置換術の手術手技の実践を行った。再置換術の問題点の一つは、骨盤の大きな骨欠損への対処であり、限られた臼蓋骨にどのように臼蓋コンポーネントを設置するか問題となる。CSTにおいて骨盤にあらかじめ大きな骨欠損を作成し、限られた骨組織にインプラントを設置する訓練を実施した。実際の手術と同様の手術手技と注意が必要であり、経験の浅い股関節外科医、人工関節認定医には有用な手術訓練となった。b)人工膝関節置換術(TKA)は、術後の膝関節痛の軽減と関節機能の回復を目的とする。前十字靱帯(ACL)には膝の位置を知る関節位置覚や,移動を認識する関節運動覚などの機能が存在する。正常な前十字靱帯が残存している症例に対して靱帯を切離して行ったTKAの満足度は低いことが判明している。したがって、近年では、正常膝関節の動きを再現するコンセプトの両十字靭帯温存TKAが行われてきた。この術式では、大腿骨と脛骨間の前・後十字靭帯が温存されることから理論的には正常膝機能の再現が可能と考えらえる、しかし、CSTにおいて施行した両十字靭帯温存TKAで、 ALC付着部で骨折が生じる合併症が観察された。したがって、両十字靭帯温存TKA施行時には、CSTを予め行うことにより適切なimplantationの訓練を行い、手術を安全に遂行することが重要である。c)前距腓靭帯損傷に対する縫合術や靭帯再建術では靭帯の設置位置決定が重要であり、外果へ刺入するアンカーの位置がcriticalである。実際の臨床では関節鏡視により確認できる外果の最遠位端が、アンカーを打つ位置と認識されていた。しかし、CSTにおける検索により鏡視でのアンカーの刺入位置が、本来の靭帯付着部より平均8mm近位に見えることが判明した。この研究により、より正確な靭帯再建術の開発につながった。
1)2020年度も、4回のCSTを企画している。初期臨床研修医のみならず、シニア医師による手術手技の確認、手術手技の安全の担保を目指した工夫を計画している。2)平成30年度、令和元年度の本研究から得られた知見を令和2年の整形外科関連学会等で発表する予定である。さらに、臨床例の手術手技への新知見の還元を含めて論文を作成する。3)手術手技を写す画像に関しては数術式に関してトライし、手術部位を鮮明にするための工夫や光量の調節を行っている。4)動画の撮像に関して、術野のコントラストを鮮明にする撮像の条件設定を行っている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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