研究課題/領域番号 |
18K09951
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研究機関 | 群馬県立県民健康科学大学 |
研究代表者 |
寺下 貴美 群馬県立県民健康科学大学, 診療放射線学部, 講師 (30506241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 深層学習 / 医用画像読影 / ROC解析 / 視線追跡システム |
研究実績の概要 |
本研究は高度な医療技術をより効果的で効率的に習得する指導法の確立を目的に、人間工学に基づいた高度医療技術のプロセスの解明、またそれを利用した指導法の開発を行うものである。また近年発展の目覚ましいAI技術を積極的に導入する。 本年度はAI技術を用いた読影中の行動分析を行うためのシステム開発およびプレデータ解析を行った。 まず読影中の視線行動を認識するため、AI技術のひとつであるDeep convolutional neural network (DCNN)を使用した。注視と跳躍運動に分類する視線解析において、従来法では、データ収集中に分析することはできない。本研究で提案したDCNN法では、認識正解率92.7%を達成し、従来法とほぼ同等であることが確認された。さらに従来法の問題点であるスループットを大幅に改善させ、視線データの収集中に分析することが可能になった。 次に、視線解析AIを組み込んだ医用画像読影評価システムを開発した。システムの概要として、対象者に医用画像を提示して読影させ、その時の視線を取得し、対象者に読影技術の評価を提示することができる。評価はReceiver operating characteristic (ROC)解析、病変位置の正解を考慮したLocation ROC解析、読影行動の評価として注視時間、注視回数、病変を最初に発見するまでの経過時間、視線行動別の経路図、見落しエラー、認識エラー、判断エラーを区別した読影エラー件数を提示することができる。 臨床経験を持つ診療放射線技師1名を対象にシステムテストを兼ねたプレ実験を行った。読影評価として正答率80%、ROC曲線下面積0.90、LROC曲線下面積0.86、平均注視時間7.46秒、平均注視回数29回、平均発見時間2.33秒であった。読影評価システムとして十分機能していることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の年次計画では初年度は、医用画像読影における視線の動きを取得し、AI技術の導入によって読影プロセスを解析することであった。本年度では赤外線視線追跡システムを用いて読影中の視線の動きを取得し、DCNNによって視線解析された結果による指標を読影評価として対象者に提示するシステムを構築できた。 しかしながら、システムテストとして1名のテストを行ったのみで、複数名の被験者における検討はできていない。当初計画で懸念していたデータ不足については、1名による視線データでも特に問題とならなかった。次年度に、複数被検者のデータ取得を行うが、複数名のデータ取得に際して、倫理委員会の審査申請を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の計画どおり進められているため、特に今後の計画の変更はない。 平成31年度/令和元年度においては、本年度に開発した読影評価システムを用いて、複数被検者を対象とした医用画像読影の能力評価を行う。これは次の教育プログラムを考案し、適応する前のプレデータとなる。 次に医用画像読影のトレーニングプログラムを考案する。トレーニングとして単に反復させるだけでは効率的とは言えない。そこで、視線行動からまさに読影の最中にフィードバックを行えるようなトレーニングシステムを考案する。本年度開発した読影評価システムを拡張し、読影中の視線行動から情報をフィードバックできるトレーニングシステムを作成する。 最終年度では、教育プログラムの実践と実践後の教育効果の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入したトビーテクノロジー社製 視線追跡装置について新古品を購入したため、計画当初の見積りより減額された。また旅費については、概算額よりも実際の額が安価であったため、減額された。 次年度はデータ収集用のノートPCが必要となるため、その購入に充てる。また本年度の研究成果について国際誌に論文投稿中であるため、英文校正費用、掲載料の不足分に使用する。
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