本研究は、医用画像読影中の視線データをもとに熟練者と初学者の違いを明らかにし、新たなトレーニング方法の開発を目指すものである。 本年度も昨年度と同様に感染症の影響で、予定していた調査は行えなかった。特に臨床の診療放射線技師を対象としたデータ収集は勤務先の医療施設で行う必要があり、感染症の流行期は調査に赴くことができない。本年度で研究期間は終了するが、今後も情勢を見てデータ収集および分析を継続する予定である。一方、本年度は新たな読影コンテンツの拡充を試み、骨格X線撮影および上部消化管造影検査の2つの仮想システムの開発について取り組んだ。これまで開発した医用画像読影評価システムは胸部X線像のみを対象としていたが、診療放射線技師の幅広い業務範囲を考慮すると、内容が乏しいと考えた。 まず、骨格撮影は複数法あり、体位とX線入射角度により複雑な陰影が形成される。これを再現するために仮想X線撮影システムを作成した。これはトラッキング技術を使用して、被写体である人間の位置と角度を算出し、体位に応じたX線像を出力する。以前のシステムではあらかじめ用意していたX線像を表示するだけだったのに対し、このシステムでは様々なX線像を新たに作成可能となった。 次に上部消化管造影検査は透視像を確認しながら、患者誘導および機器操作を同時に行わなければならないため、読影手技はより高度になる。これを再現するために仮想上部消化管検査システムを開発した。これには3Dゲームエンジンを使用して、バーチャル空間でX線透視装置と被写体を再現した。コントローラで装置を操作でき、被写体のローリングも可能である。またバリウムを模擬した3Dモデルをマーゲンモデル内に配置でき、上部消化管造影像のように描画することが可能である。 これらのシステムを組み込み、読影中の視線データにおけるプロセス解析を拡充することが可能となる。
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