研究実績の概要 |
本研究の目的は妊娠中絶に対する否定的な心理(スティグマ)を測定する尺度を開発し、スティグマを軽減する(アンチスティグマ)のための利用について検討することであった。研究実績は以下の通りである。 1.先行研究によるスティグマに関する研究成果から、妊娠中絶に関するスティグマでは、社会一般の人が持つパブリックスティグマと本人が抱くセルフスティグマの両者に注目する必要があることを確認した。2.海外で開発されたスティグマ尺度であるSABAS (Stigmatizing attitudes beliefs and action scale)は、個人及びコミュニティレベルの妊娠中絶に対するスティグマを測定する尺度であり、日本人女性を対象とした尺度作成のための枠組みとして利用可能であることを確認した。また、ILAS(Individual Level Abortion Stigma Scale)は、個人レベルのスティグマを測定する尺度であり、妊娠中絶を経験した日本人女性を対象にした尺度作成の枠組みとして参考にできることを確認した。 3.看護職者が妊娠中絶に対して抱くスティグマの様相については、尺度としてSABASの利用が可能であった。また、看護職者の中で妊娠中絶経験のある者15名へのILASの結果では、「孤立」「自己批判」の値が高く、諸外国における結果と比較するとILAS総得点は同等であることが確認できた。 4.2023年度にオンライン調査を実施し、18歳以上の日本人女性4,000人からデータを回収できた。SABAS3因子の平均を比較すると「否定的肯定観念」が最も高かった。また、妊娠中絶経験のある者(431名)へのILAS4因子の平均得点の比較では、「孤立」が最も高かった。なお、SABASの因子分析結果では、本調査においても3因子となったが、因子を構成する項目に一部違いが見られた。
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