研究実績の概要 |
医薬品適正使用の評価に対して、様々な情報源に基づく医薬品の使用状況が十分活用できていない。なぜなら、医薬品の使用状況を把握するには、製品名、規格、剤形などの違いに対して成分や系統毎に力価や日数で得る必要があり、対象期間、対象地域や診療科といった様々な目的に応じて膨大且つ煩雑な計算を必要とするからである。そこで、本研究では、これらの課題を解決した上で「医薬品適正使用の見える化」が行える環境の構築を目指すこととした。 以前より行っている抗微生物薬(内服1,727剤、注射薬812剤)に加え、新たに糖尿病薬(1,680剤)、循環器用薬(10,056剤)、抗悪性腫瘍剤(979剤)、麻薬製剤(846剤)、眼科用剤(916剤)のマスターを作成し、2020年度にこれらを用いて簡便に集計するためのアプリケーション(DUVAT: Drug Use Visualization Assisting Tool)を開発した。これらを用いて現在、様々な領域の使用状況を明らかにすべく調査を行っているが、感染症領域において耐性菌に使用する抗菌薬や濫用すると問題が懸念されている抗菌薬の使用動向を明らかにした(Biol Pharm Bull 2020, 43(12), 1906-1910. Biol Pharm Bull 2021 in press)。また、本研究を実施していく上で、評価指標を算出する際に用いる使用量、投与日数、使用患者数の特徴や課題について評価した(J. Infect. Chemother. 2021 doi: 10.1016/j.jiac.2021.02.009)。 本研究により、情報源に依らず、医薬品使用の見える化を簡便に行える環境を構築できた。医薬品の使用状況を様々な視点で明らかにする本研究は、今後、地域や他国間の比較を可能とし、医療政策や国民に対して有益な情報を提供することが期待できる。
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