研究課題
本研究では、日本全国から幅広く収集された結核菌株の菌ゲノム情報、遺伝子型別情報(VNTR情報)、分離地情報、患者情報を総合的に分析し、本邦における結核感染伝播推定に関わる以下2つの知見を得た。1.結核分子疫学調査において標準的に用いられているVNTR法では、不十分な菌株識別能を背景として感染伝播を過剰に見積もる可能性が指摘されている。そこで、Walkerらの先行研究を参考に、ゲノム差異が5 SNVs以内の関係性を持つ株群を真の感染伝播由来株と仮定し、VNTR法による感染伝播推定精度を評価した。国内外で使用されているVNTR法でクラスターを形成した52%から76%の株は6 SNVs以上の関係性を示してお り、VNTRクラスターの半数以上が感染伝播を反映していない可能性が示唆された。2. 菌ゲノム情報と分離地情報を用いて結核感染が生じた地理的範囲を推計した。疫学的接触が強く疑われる群(0-5 SNVs)は、そうではない群と比べて、有意に近距離で発生しており(ペアワイズで比較した株間の分離距離における中央値、40 km [0-5 SNVs] vs 293 km [13- SNVs])、p<0.01、図2)、大半が200km以内で分離されていた。これらの知見は将来の導入が期待される結核菌ゲノム分子疫学調査の基礎情報となり、結核対策の高精度化に活用される。
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