研究課題/領域番号 |
18K09964
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大原 信 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80194273)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 診療録監査 / 診療録の定量的分析 / システム開発 / 連携テスト |
研究実績の概要 |
1.診療録監査の実施。初年度も外来診療録112件、入院診療録224件のについて、診療情報管理士による監査を実施した。 2.システム開発について。既に実装している電子カルテシステムの診療記録データウェアハウスから匿名加工された分析用データサーバ(Microsoft SQL Server) にデータを抽出する機能の策定を行い、以下のような機能とすることを決定した。a)システムのデータベース(Microsoft SQL Server)と接続し、指定したデータベースのテーブルからデータを取得する機能を有すること。b)SQL Serverとの接続はネイティブのリモート接続により行うこと。c)SQL Serverとの接続においては、指定したアカウントによる認証を行うこと。d)データベースのテーブルについては、読み出し専用の接続とすること。e)検索条件としては、利用者ID、開始日、終了日を用い、指標システムが管理する診療録記載監査結果テーブルより、当該利用者に関する開始日と終了日の間に含まれる診療録記載状況レコードを取得する物とする。 3.また、認証情報,データベース名称,テーブル名称,診療録記載状況レコードの構造は、内容については、以下の項目について抽出することとして、それぞれのカラム名、データ型を決定し、仕様としてまとめ、システム開発を行った。利用者ID、患者ID、入院日、退院日、SOAPの記載がある日数、SOAPの記載数、Sの平均記載量、Oの平均記載量、Aの平均記載量、Pの平均記載量、OPの平均記載量、TPの平均記載量、オーダが入力された日数、入力されたオーダ数、一回あたり入力されたオーダ数の平均値。 4.以上の仕様について、分析用のデータサーバとの間のシステム連携インターフェースについて、機能連携がなされているかの連携テストおよびテーブル値の取得確認テストを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、診療録監査項目の見直し行い、継続可能な監査体制を確立して研究協力者である診療情報管理士と共に、外来診療録と入院診療録の監査を実施することが出来た。 診療録記載の定量的分析のためのシステム開発として、電子カルテシステムの診療記録データウェアハウスから、分析用のデータベースへのデータ抽出について、テーブルの仕様を確定し、システム開発を行い、インターフェス連携テスト、獲得テーブルの値取得の確認まで順調に実施することが出来た。 計画変更点としては、当初はSOAP各記載欄毎に記載量を抽出する予定であったが、P(Plan)については、より詳細な内容について分析を可能とするために、P欄の記載をオーダが転記される欄、DPとして診断のためのプランの記載欄、TPとして治療のためのプラン記載と三つに分類してそれぞれの記載量を定量分析できるように仕様を決定して開発を行った。また、オーダ数、オーダされた日数、一回あたり入力されたオーダ数の平均値も算定できるように工夫し、記載とオーダを明確に区分できる仕様を追加している。 現在、この仕様にてシステム連携テストまでは終了し、次年度以降の分析に向けて継続してデータを収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画は以下の通りである。 今年度開発したシステムを活用し、各診療科や疾患毎、特に内科系・外科系・特定領域科毎に、またクリニカルパス適応例であるか、重症度などを考慮しつつ、アセスメントの記載量について定量的分析を行う。 特にアセスメント記載とプラン記載について両者の関係を明らかにすると共に、定量的だけではなく、オーダー入力時、すなわちプラン入力時に何らかのアセスメント記載がされているか等の時系列分析を加える。システムについても、活用中に随時改良を施す予定である。また継続して実施予定の診療録監査の結果とも比較検討を加える。 次年度の計画が順調に推移した場合の最終年度の計画は以下の通りとなる。 医療の質に向上に資する電子カルテシステム再構築と電子カルテの適切な監査方法の確立 これまでの診療録監査により明らかになった、医師のアセスメント記載の減少を定量的に示すこと。加えて、S,O,A、Pの記載方法に変わるより「電子カルテ」に適応した診療録記載方法を提案し、「電子カルテ」を再構築することである。すなわち、最終年度では、分析結果を基に「電子カルテ」の特性を生かし、単なる診療記録以上の、医療の質の向上、医療安全の確保、病院経営や社会的利用、医療政策の立案・検証、医学研究への利用、医学研究への利用などに、より利用しやすく構造化された「電子診療録」が成立するべき診療記録記載方法を提案すると共に、電子カルテ環境における、適切な診療録の量的監査・質的監査についての方法を提示する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抽出ツールの設計開発の仕様の決定のプロセスにおいて、当初使用する予定であった、Tableu Desktop Prof.を使用せずに、ツールの設計およびシステム開発をすることが出来たため、その分の費用をシステム開発および開発用消耗品に振り向けて、システム開発および、分析用データサーバとの間のシステム機能連携テスト、およびテーブル値の取得確認テストまでを実施した。総額として、想定より安価に研究遂行が実現できた。未使用額は、次年度に予定しているデータ分析に必要な消耗品の購入に充てる。
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