本研究は、我が国の医薬品産業において、新薬開発のインセンティブを失わずに、ジェネリック・バイオシミラー市場を拡大していくための、新たな制度設計に資するためのものである。 本年度は、前年度までの調査に基づき、新薬開発と特許、およびジェネリック・バイオシミラーの市場参入に関する現状と課題を明らかとし、新薬市場独占期間に将来的に影響を与える可能性のある産業動向や判例について包括的な分析を行った。 新薬市場独占期間は、特許期間だけではなく、我が国では、薬機法上の再審査期間(薬機法14条の4)によっても与えられる場合がある。我が国の再審査制度の導入経緯や制度変遷を欧米等と比較し、特にバイオ医薬品に関する保護強化について検討を行った。我が国では、再審査期間は、諸外国制度に比して、市販後安全性監査の意味合いが強いため、近年の経済協力協定や自由貿易協定において、新薬保護目的の交渉が円滑に進まない可能性がある。 本研究実施期間中、ジェネリック・バイオシミラーの市場参入について、各年の状況を把握し、最新の特許係争について傾向の分析を行った。ジェネリック・バイオシミラーの承認手続きにおいて新薬特許権の抵触可能性を判断する現行制度は、上市後の特許係争リスクを十分に下げていない可能性もあり、今後も検討が必要である。
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