研究実績の概要 |
本研究は、令和2年度から国内の全医学部において正式実施が予定されている診療参加型臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-CC OSCE)の信頼性を一般化可能性理論に基づき評価し、向上することを目的としている。 平成29年度~平成31年度の3年間にPost-CC OSCEトライアルを受験した金沢大学医薬保健学域医学類第6学年の全学生が本研究に参加した。試験の状況は、各試験会場に設置したカメラを用いて記録したが、平成29年度は各会場に1台ずつ、平成30年度は3台ずつ、平成31年度は課題数の増加に伴い試験会場が増加したため2台ずつを用いた。学生数(p)はそれぞれ122名、110名、124名、列数(c)はそれぞれ10列、10列、11列、課題数(S)はそれぞれ3課題、4課題、6課題であり、評価者数(r)の加重平均はそれぞれ1.5名、2名、2名、評価項目数はいずれも6項目であった。全てのアセスメント結果を含めたデータセットを各年度毎にBremmanのurGENOVAを用いて(p:c)x(R:S)xIデザインで解析し、各要因、要因間交互作用、誤差の分散成分を算出し、これを用いて全体の相対的Generalizability coefficientであるG(overall,ave)、ならびにR間,I間,S間の単回観察G係数[G(R), G(I), G(S)]と、それぞれの平均G係数[G(R,ave), G(I,ave), G(S,ave)]を算出した。 平成29年度、30年度、31年度の全体のG係数は、それぞれ0.459、0.705、0.782と向上していた。仮にG係数0.85を目標とした場合、評価者2名で11課題が必要と推定された。 一般に重大な利害が関わる試験には0.9以上のG係数が必要とされており、未だにこの試験の信頼性は十分とは言えず、少なくとも12課題での実施が望まれる。
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