研究課題/領域番号 |
18K09975
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大前 憲史 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60645430)
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研究分担者 |
福原 俊一 京都大学, 医学研究科, 研究員 (30238505)
小島 祥敬 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60305539)
脇田 貴文 関西大学, 社会学部, 教授 (60456861)
栗田 宜明 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 特任教授 (80736976)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下部尿路機能障害 / 疫学 / 低活動膀胱 / 過活動膀胱 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究の中で行った、低活動膀胱の疫学的知見に関する文献レビューの結果、未だ本領域では質の高いエビデンスがほとんどないことが明らかとなった。低活動膀胱やその原因病態である排尿筋低活動には、目下、科学的に妥当で広く利用可能な診断基準が存在しないことが大きな要因の一つとなっている。男性でより多く症状を有し、男女とも加齢に伴って有病割合が増加することが示唆されるが、例えば、一般地域住民における低活動膀胱・排尿筋低活動の有病割合や自然史といった基礎的な事柄すらよく分かっていない。 本研究では、低活動膀胱患者でも高頻度で認める、頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁に関しても地域在住高齢者を対象に疫学調査を行い、いくつかの興味深い知見が蓄積されてきた。まず、酸化ストレスや虚血と関わりのある終末糖化産物の蓄積とそのような症状との関連性についての横断的な検討では、有意な関連性は認められなかった。一方で、歩行速度とそれら症状との間には線形の量・反応関係が認められ、歩行速度が遅いほど症状の有病割合が高くなることが判明した。今年度は、上記の知見を踏まえ、複数年度のデータを縦断的に解析することで、これらの症状と転倒発症との関連性について検討した。その結果、地域在住高齢者においては、たとえ、切迫性尿失禁がなくとも、頻尿・尿意切迫感症状があることで転倒発症が約2倍増加する可能性があることが明らかとなった。突然の強い尿意を覚えると、歩行のリズムや速度が平時とは異なることが既に報告されており、高齢者においてはそのような変化が転倒を引き起こす可能性があると考察する。転倒は、骨折や頭部外傷など重症外傷に直結し、日本の要介護要因としても4番目に多いものとなっており、今後、地域での転倒予防策を検討する際に、本研究結果が重要な役割を果たすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに構築してきたデータベースシステムを利用し、地域在住高齢者の下部尿路症状と様々な臨床的因子との関連性について、継続的に調査・検討を行っている。既にいくつかの成果は複数の学会発表や医学論文として公表できた。ただ、発表が内定していた国際学会が新型コロナウイルス感染症の影響で延期開催となり、予定通りの成果報告ができなくなった。また、泌尿器科外来を受診した低活動膀胱患者を対象に、質問票(初期版)を用いての面談調査も継続中であるが、適格基準に該当する患者数がそもそも少ないことに加え、新型コロナウイルス感染症に伴う受診控えや面談調査実施の困難さで、当初の予定より症例の集積が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
延期となった国際学会は次年度のオンラインでの開催が決定しており、そこで成果報告できる予定となっている。また、患者の面談調査に関しても、新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に応じて適宜感染対策を講じながら患者の理解を得られるよう努力し、推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により成果発表が確定していた国際学会が延期され、これに関連した参加費や旅費を支出できなかった。次年度に延期開催予定であり、その費用として支出が見込まれる。同様の理由で、患者を対象とした面談調査の進捗も滞り、次年度の調査時に支出が見込まれる。
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