我々は、医学部臨床実習において外科系3診療科と連携した高機能腹腔鏡下手術シミュレータを用いたシミュレーション実習を展開し、観察された医学生の器用さに着目して精神運動能力(psychomotor skill)と志望進路の関係性について検討してきた。その中で、外科系診療科志望の医学生は、非外科系診療科志望 の医学生と比較して客観的なシミュレータ操作能力に差異はないものの、自分自身の器用さを高く評価する傾向にあることを明らかにした。また、一方で、個々の医学生が卒後初期臨床研修を終えて実際に選択した専門診療科と、彼らの卒前で観察された器用さの間には関連が認められないことも明らかにした。そこで本研究では、医師の学修過程でのpsychomotor skillがどのような因子に影響されるかを明らかにすることを目的として研究を進めた。 研究期間中は新型コロナウイルス感染症の影響で行動が制限されたことと共同研究者の異動があったため、研究計画の大幅な見直しに迫られ、結果的に研究協力者への依頼やデータ取得開始が遅れることとなった。 最終年度は、研究倫理審査を経て、臨床実習前の医学部2、3年生28名に研究協力を依頼した。彼らに高機能腹腔鏡下手術シミュレータの基本練習タスクを操作させて、psychomotor skillに関するデータを収集できた。同時に、器用さと志望進路に関するアンケート調査を行い、解析を行ったところ、psychomotor skillには器用さの自己評価と関連は認められなかった。また、志望進路の違いによるPsychomotor skillの差異も認められなかった。
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