研究課題/領域番号 |
18K09986
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山内 かづ代 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (30648069)
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研究分担者 |
久保 沙織 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70631943)
大久保 由美子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80287317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 診察技能学修 / 臨床実習 / Work based assessment / 筋骨格系疾患 / 運動器疼痛 / シミュレーション教育 / 身体診察 / 臨床推論 |
研究実績の概要 |
【背景】超高齢社会を迎え,外来傷病分類別で筋骨格系疾患患者数は循環器系と並び第2位を占める.卒前卒後を通じ,四肢脊柱の適切な身体診察および臨床推論に基づく診断能力の高い医師の育成が求められている.本研究の目的は,整形外科臨床実習における初診外来診察シミュレーション教育の介入が,四肢脊柱の診察技能を向上させるか否かを検証することである. 【対象と方法】対象は整形外科臨床実習中の医学部5年生のうち,外来診療に参加した90名である. 方略1)外来実習前日に運動器疼痛症例を基盤とした学生同士のロールプレイによる診察シミュレーションを実施,指導医フィードバックを行った.方略2)学生が初診外来患者の診察を実施,指導医が簡易版臨床能力評価法(mini-Clinical Evaluation Exercise: Mini-CEX)で評価しフィードバックを行った.評価方法)方略2の前に方略1を行った群を介入群(N=64),スケジュール等の理由で方略1を行わなかった群を非介入群(N=26)としてMini-CEXスコア(医療面接,身体診察,コミュニケーション,臨床推論,プロフェッショナリズム,マネージメント,総合臨床能力)を比較した. 【結果】両群間に症例内容,難易度およびMini-CEXの経験回数に差はなかった.Mini-CEXスコアのうち身体診察,臨床推論,総合臨床能力において介入群が有意に高値を示した(P<0.05). 【考察】臨床実習で実践的なシミュレーションとフィードバックを組み合わせたプログラムを構築・実践したことで四肢脊柱臨床技能を,超短期的,平均的には向上させた.しかし獲得能力に個人のばらつきがあり,標準的に臨床技能を獲得・定着できたとは言い難い.学修者個人の認知負荷の不足が一因の可能性があり,今後獲得能力の質評価,中長期的評価を行いプログラムの質的改善を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ計画通りに実施できているため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画と昨年度の結果を鑑み,模擬患者(SP)とのシミュレーション,動画を活用したフィードバックなどの能動的学修を積極的に取り入れたプログラムが,医学部生の四肢脊柱身体診察および臨床推論能力を向上させるかを検証する. 平成30年度のプログラムと同一の枠組みで内容を一部変更し質的,量的解析手法による学修者およびプログラム評価を行う. 本対象者は4年時に四肢脊柱身体診察技能を大講義形式で1コマ学修している. プログラムの実施:1日目にシミュレーション演習を外来実習前日に120分行う(4-5名/グループ x 24グループ).1)事前アンケート実施.2)四肢脊柱身体診察標準ビデオを基に学生,指導医,SPによるタスクトレーニング実施.3)SPとの運動器疼痛症例シナリオを用いた診察シミュレーション(ビデオ録画)および症例報告を実施.4)指導医がMini-CEXを用い学生に形成的にフィードバック.2日目に初診外来実習を行う.1)学生は指導医が口頭同意を得た患者の問診票を確認し準備.2)学生が医療面接に見合った四肢脊柱の身体診察を実施し症例報告.指導医はMini-CEXを記載.3)症例ディスカッションし学生に形成的フィードバック.4)事後アンケート実施.5)シミュレーション時の撮影動画は後日動画解析ソフトを用い評価し学生に形成的フィードバック.6)学修者の総括評価法としてPost-CC OSCEを実施. 質的,量的解析手法による学修者およびプログラム評価:本プログラムのコンピテンシーを,Mini-CEX, 動画, OSCEを用い評価する.動画評価はmini-CEX評価との相関を分析し評価ツールとしての妥当性を検証する.指導医および自己フィードバックのテキストコーディング分析を行い,学修者評価として高評価を得た学生と低評価の学生の学修プロセスを比較し,有用な指導医フィードバックを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の人件費を当初12ヶ月で計画していたが、実際の雇用は7月からであったため、その分次年度使用額が生じた。平成31年度に国際学会に採択されたため、今年度請求した助成金と合わせ旅費の一部として使用を計画している。
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