研究実績の概要 |
【背景】四肢脊柱の適切な身体診察に基づく臨床推論は医師に必須の能力であるが,実践的な教育機会は少なく,診察技術不足や自信の欠如を招いている. 【目的】診療参加型実習において模擬患者を活用したシミュレーション,フィードバックを取り入れることで能動的学修を促進し,外来診察における臨床技能を評価すること. 【対象と方法】整形外科臨床実習中の医学部5年生110名のうち,外来診察シミュレーションと初診外来実習の両方を行った40名.1日目(外来実習前日)に事前自己評価(4段階),模擬患者と症例シナリオを用いた外来診察シミュレーションを実施.指導医はMini-CEX(6段階)を用い学生に形成的に評価,フィードバックを実施.2日目は初診外来にて学生の医療面接および身体診察を指導医が観察。診察後,学生は症例報告および指導医と症例ディスカッションを行い,自己評価を実施, 指導医はMini-CEX評価を実施した.分析方法:シミュレーションと外来診察時のMini-CEX総合点が向上した群21名, 低下した群19名の2群に分け,外来診察時Mini-CEX医療面接,身体診察,コミュニケーション,臨床診断,プロフェッショナリズム,マネージメント,総合点,およびプログラム前後の自己評価の2群間比較を行った. 【結果】向上群と低下群間で有意差を認めたMini-CEXの項目は,身体診察,マネージメント,総合点であった(P<0.005).プログラム前後の自己評価は,筋骨格に愁訴を持つ患者とのコミュニケーション,身体診察技能,臨床診断力,外来症例プレゼンテーションの自信についてそれぞれ有意差を認めた(P<0.05). 【考察】外来診察臨床技能が向上した学生は,特に身体診察,マネージメント力が上がり,さらに筋骨格に愁訴を持つ患者とのコミュニケーション,身体診察技能,臨床診断力,外来症例プレゼンテーションの自信を獲得した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度までは,プログラムに参加した学修者の評価としてmini-CEXを用いた量的解析を行ってきたが, Post-CC OSCE結果, 学生のプログラム実施後アンケート結果の解析をさらに実施し, プログラムを構成するどの教育手法が技能の達成に有効であったかを分析する. さらに質的解析として, 指導医フィードバックおよび学生の自己フィードバック内容のテキストコーディング分析, 外来診察シミュレーション時の動画を用い, 学修者評価として高評価を得た学生と低評価の学生の学修プロセスおよび有用な指導医フィードバックを検証する. また, 平成31年度とほぼ同一内容で令和元年度にプログラムを実施し質的,量的解析手法による学修者およびプログラム評価を行う. 本対象者は4年時に, 大講義形式に加え, 模擬患者を一部活用したロールプレイ実践形式で四肢脊柱身体診察技能を学修している. 質的,量的解析手法による学修者およびプログラム評価については,平成31年度と同様に評価を実施する. また, 4年時臨床実習前学修の違いによるコンピテンシー達成度を経年的に比較する. これまでの成果を英文論文にまとめ,国際学術雑誌に発表する。
|