研究課題/領域番号 |
18K09989
|
研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
佐藤 大介 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (10646996)
|
研究分担者 |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
小寺 聡 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80794776)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 医療経済評価 / レセプト情報等データベース / 費用対効果分析 / 循環器疾患 / DOAC / ICM |
研究実績の概要 |
2018年度における脳梗塞再発予防のための治療薬および検査機器の医療経済評価に関する研究では、これまでの研究成果を基に予備的研究の成果として、Health Technology Assessment international Annual Meeting2018に出席し「The Effectiveness Of NOAC And VKA: Observational Study In Japan」にて口頭発表を行った。 この成果を踏まえ、より精緻な研究を実施するために、分析に用いるデータソースであるレセプト情報等データベースから第三者提供を申し出るために、厚生労働省保険局が定めた手続きに沿って、レセプト情報等の提供に関する申出を行った。申出内容は、平成21年4月診療分から平成30年12月診療分(9年9ヶ月分)の(1) 医科(入院・入院外) 対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト、(2) DPC 対象の傷病名(疑いを除く)のレセプト(3) 調剤のレセプト、(4)歯科のレセプトから全保険者のレセプトから、抽出条件の傷病名(疑い病名を除く)を有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について、対象期間中の「医科」「DPC」「調剤」レセプトをすべておよび抽出条件の歯科診療行為コードを有するレセプトのハッシュ値1またはハッシュ値2について対象期間中の「歯科」レセプトをすべて抽出することとした。申出の結果、平成30年12月19日付 厚生労働省発保1219第2号により、平成30年10月25日付でレセプト情報等の提供に関する申出について承諾を得たことから、データ抽出・加工条件について手続きを進めている。 これらを基に、国立保健医療科学院研究倫理審査委員会へ研究倫理申請を行い、平成31年3月28日の研究倫理審査専門委員会によって承認された(承認番号:NIPH-IBRA#12234)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書において、2018年度の研究計画では、レセプト情報等データベースの利用申出を行うため、提供を受けるまでの期間は予備的研究で用いたデータベースから解析用データセットを抽出して研究を進めることとしていた。今年度の研究では予備的研究の成果を学会にて口頭発表(The 8th HTAsiaLink Annual Conference. The Effectiveness of Dabigatran, Rivaroxaban and VKA in patients with non-valvular atrial fibrillation (NVAF) using National insurance Claim Database in Japan.)する等の成果を上げており、研究計画は順調に進展している。 さらに2年目の実施計画であるレセプト情報を用いた分析手法の手順書に着手しており、「提供を受けたデータベースから解析用データセットを生成するまでのプログラム処理の手順」を作成が完了している。現時点では「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成し、分担研究者との検証作業を進めている。 しかしながらレセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ届くまではかなりの時間を要することが他の研究報告からも明らかになっている。そのため現在までに申出したデータは提供されていない。そのため分析モデルに係る有効性や費用のパラメーターを算出することまでには至っていない。このような進捗状況を踏まえ「概ね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
レセプト情報等データベースの利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ提供され次第、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)と植込型心電図記録計(ICM)それぞれの医療経済評価の分析モデルを作成し、有効性指標と費用を国内臨床試験結果とNDBからそれぞれ比較する。 NOACに対する分析モデルは分担研究者の小寺が予備的研究で作成したモデルを基に、医療経済評価の代表的手法で患者の状態を確率で表すマルコフモデルを用いて患者一人ひとりを個別に追跡するマイクロシミュレーション分析を行うことを検討している。また、ICMは潜因性脳梗塞発症患者に対するICMの関連医療費である①「脳卒中関連疾病費用減」は「検査費用増」を上回るかどうか、②ICMを使用することで再発率が低下するならば、検査費用増の価値があるかどうかを明らかにする。分析モデルはマルコフモデルを用いる。 レセプトの提供にあたってはNOACやICMを使用する循環器専門医が配置されている医療機関と配置されていない医療機関を分類し、当該情報を識別した様式でレセプトの提供を受ける。これにより専門医の配置状況と患者の有害事象等のアウトカムと医療費等の費用を比較し、従来の既存治療と比べた費用対効果を明らかにする。そのため全国医療機関の循環器専門医の人数を網羅したデータを収集・加工し、医療機関マスタの作成を進めている。このようなマスタ作成方法を含めたレセプト情報を用いた分析手法の手順書については、昨年度の研究計画を継続し「対象患者の同定」、「対象技術の抽出」、「比較技術の抽出」「医療費用の集計」について、第三者が再現可能にするための「解析計画書」「変数定義書」「集計表様式」を作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の通りです。 当初研究計画では、今年度中に厚生労働省より第三者提供によってレセプト情報データベースの提供を受け、必要な解析ソフトウェア等の調達および人件費や外部委託費を用いた作業計画を実行する予定であった。しかしながら本研究のために申出を行い厚生労働大臣の許可を得られているにもかかわらず、現時点でレセプト情報データベースの提供が完了していない。これは本研究以外のレセプト情報データベースを用いた研究で生じている事象であり、やむを得ない状況である。 このような理由から、レセプト情報データベースの提供を受けた後可及的速やかに研究計画を実施するため、次年度使用額が生じた。
|