研究課題/領域番号 |
18K09999
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
後藤 由和 金沢大学, 医学系, 准教授 (60282167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心停止 / 病院前救護 / 医療社会学 / 地域医療 / 蘇生中止 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は、救急隊の現場蘇生実施時間と傷病者の年齢因子を考慮した現場蘇生中止基準の開発とその内部検証、および、院外心停止例に対する医師同乗と非同乗救急搬送の転帰比較を行った。現場蘇生中止基準の検討では、心停止に対する蘇生ガイドライン2010準拠期間のデータ(n=629,471)を用いて多変量解析を行った。その結果、次の5項目をすべて満たす場合が現場蘇生中止基準と考えられた。すなわち、1.初期心電図が心静止、2.目撃のない心停止、3.年齢81歳以上、4.バイスタンダーによる救命処置なし、5.救急隊による蘇生実施後14分経過しても自己心拍再開が一度もない、の以上5項目である。この基準を満した場合、開発群の心停止後1か月の死亡例予測は特異度99.2%・陽性的中率99.9%であり、検証群(内部検証)では特異度99.5%・陽性的中率99.8%であった。本基準に該当する院外心停止例は、開発群10.6%・検証群10.4%であった。この成果は、第21回日本臨床救急医学会総会(2018.6、名古屋)、欧州心臓病学会(2018.8、ミュンヘン)において発表し、J Cardiology誌(2019;73:240-246)に掲載された。次に、医師同乗救急搬送は、現行法上現場で蘇生中止を医師が直接判断できる方策であることから、非医師同乗救急搬送群との傷病者の転帰比較を行った。前述のデータを用い、傾向スコアによる交絡因子の調整を行い解析した。その結果、医師同乗救急搬送群は、小児心停止例とバイスタンダーによる除細動例を除き、非医師同乗救急搬送群より有意に1か月後の神経学的転帰良好割合が高かった(6.0% 対4.6%、調整オッズ比1.44)。この成果は、第46回日本救急医学会総会(2018.11、横浜)において発表し、Resuscitation誌(2019;136:38-46)に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿い、消防庁集計の全国ウツタイン院外心停止データを用いて、解析を行った。その成果を国内外の学会で発表し、論文(英文2編)にまとめることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、18歳以上の成人院外心停止例を対象とした現場蘇生中止基準を開発・検証(内部検証)したが、18歳未満の小児例は検討していない。したがって、次年次以降は、小児院外心停止例に対する現場蘇生中止基準の開発およびその検証(内部検証)と、2016年以降の全国データを用いて、外部検証を成人例と小児例の両現場蘇生中止基準に対して行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な予算施行により、次年度使用額が生じた。論文投稿代金およびオープンアクセス代金の一部に補充する予定である。
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