研究実績の概要 |
本年度は、昨年度開発した現場蘇生中止基準の外部検証と院外心停止例の転帰に対する性差の影響を解析した。開発した現場蘇生中止基準は、Journal of Cardiology (2019;73:240-246)に掲載され、第67回日本心臓病学会学術集会(2019.9.13, 名古屋)において、最優秀論文賞(上田賞)を受賞した。本年度は、2016年から2017年度の全国院外心停止例(N=242,184)を用いて外部検証を行った。その結果、心停止後1か月後の死亡予測は特異度99.5%・陽性的中率99.8%であった。本基準の該当する院外心停止者は10.4%であった。また、蘇生ガイドラインで推奨されているBLS蘇生中止基準を同じ対象に適応すると、心停止後1か月後の死亡予測は特異度44.7%・陽性的中率96.7%であった。この特異度と陽性的中率は我々の開発基準より低く、わが国ではBLS蘇生中止基準の運用は適切でないと考えられた。この成果は、第47回日本救急医学会学術集会(2019.10.2, 東京)において発表した。また、院外心停止例の転帰に対する性差の影響は、2013年から2016年度の全国院外心停止例(N=386,535)を対象とし検討した。年齢別に8群に分類し、心停止後1か月後の転帰を男女間で比較した。その結果、粗生存率は3群(<30歳、80-89歳、≧90歳)を除き男性が女性より優位に高かった(すべてp<0.001)。しかし、傾向スコアを用いた交絡因子の調整を行うとすべての群において性差は消失した(すべてp>0.05)。すなわち、高齢者を含めたすべての年齢層において、心停止後1か月後の転帰に性差はないことが判明した。この成果は、第22回日本臨床救急医学会総会(2019.5.31、和歌山市)において発表し、Critical Care (2019;23:263)に掲載された。
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