研究課題/領域番号 |
18K10001
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
西村 信弘 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 教授 (30529657)
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研究分担者 |
佐野 千晶 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (70325059)
直良 浩司 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90243427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AMR / ESBL / 抗菌薬 / 分子疫学解析 |
研究実績の概要 |
島根大学医学部附属病院で検出された大腸菌のうちESBL産生菌株を用いて、薬剤耐性判定、POT型解析、遺伝子解析を実施した。分離されたESBL産生大腸菌は世界的なESBL産生大腸菌蔓延の要因となったST131株が2013年は75%を占めていたが、2017年-2020年は28%-40%に半減し、他のタイプの株へと変化していた。これはフルオロキノロンの適正使用が進められた結果であると推察される。しかし、2021年は再びST131が増加して53%を占めていた。ST131株の減少により、大腸菌のフルオロキノロンの感受性は回復していたが、ST131株の増加にともない、耐性化が進みつつある。このように、フルオロキノロンの感受性の回復により、フルオロキノロンの使用量が増加すると、再び耐性化が進むという悪循環に陥る危険性が示唆された。しかし、全国的にみてもまだまだフルオロキノロン耐性率は低い状況であり、今後も注視していくことで、抗菌薬の適正な使用に貢献できると考えられる。 また、ESBL産生菌(菌種を問わず)の検出状況をみると減少傾向はあるものの、どの菌種においても感性菌を含む検出数に閉める割合は、JANISサーベイランスの報告に比較して高い水準であり、感染伝播防止の面では対策が十分に機能していない可能性が考えられる。 高木病院でのESBL産生大腸菌の検出状況をみると、大腸菌に占める割合はさらに高い傾向が認められ、薬剤耐性パターンも島根大学病院での状況とは異なっていた。また、ESBLを産生する菌種についても島根大学病院での検出状況とは大きく異なっており、地域間での差が観察された。しかし、詳細な解析が継続中であり、抗菌薬使用動向との関連も含めて解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、島根大学附属病院における検査業務、特にPCR検査が増加し、細菌検査での研究的遺伝子解析の実施が制限されたため、十分な検体が確保できず、それに伴い解析も進んでいない。また、高木病院での状況も同様で、さらに緊急事態宣言および蔓延防止等重点措置が発出され、福岡県での患者数増大が本研究の遂行に大きく影響した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も継続して研究することとし、ESBL産生大腸菌に対する薬剤耐性、また、POT型解析、遺伝子解析を進め、抗菌薬使用量との関連性を明らかにする。高木病院においては、疫学調査を進めることにより、地域差および抗菌薬使用動向と多剤耐性の関連を明らかにする予定である。 また、JANISおよびJ-SIPHE 感染対策連携共通プラットフォームの情報との連携を行い、全国レベルでの統計との整合性を確認した上で、AMR対策シミュレーションモデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、臨床検査部門のPCR検査負担が大きく、本研究における微生物検体の採取、遺伝子解析数が確保できなかったため。コロナ感染症以外の感染症の入院患者も減少していたため、継続して研究実施することとした。 また、抗菌薬使用量の減少はコロナ感染症蔓延の影響が多大にあると考えられるため、実態把握には時間を要した。 2022年度は、引き続きESBL産生大腸菌のPOT型、遺伝子解析の実施することとし、その検査キット、試薬、消耗品類(チューブ、チップなど)を購入のために研究費を使用する。また、学会での発表を予定しており、参加費および旅費に研究費を使用する。
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