研究課題/領域番号 |
18K10002
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小比賀 美香子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (00610924)
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研究分担者 |
片岡 仁美 岡山大学, 大学病院, 教授 (20420490)
三好 智子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40444674)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 物語能力 / 医学教育 |
研究実績の概要 |
1991年、Guyattらにより、「科学的根拠に基づく医療 (Evidence Based Medicine: EBM)」が提唱されて以来、EBMは世界の医療の主流をなしている。1998年にGreenhalghらが、「物語と対話に基づく医療 (Narrative Based Medicine: NBM)」を提唱し、EBMとNBMは「患者中心の医療」を実践するための「車の両輪」に例えられるが、EBMの普及に比べ、NBMの臨床における実践手法、教育手法は十分に認識されておらず、研究報告も少ない。また近年、医師のプロフェッショナリズムが注目され、これまでの知識・技術偏重の医学教育への反省から、態度教育の重要性が論じられるようになった。その中で、我々は、医師がもつべき基本的能力として「物語能力(narrative competence)」に着目した。本研究の目的は、優れた「物語能力」をもつ医師を育成する教育プログラム開発のために、医学生、臨床研修医の「物語能力」に影響を及ぼす要因を、量的および質的研究にて明らかにすることである。 総合内科での選択臨床実習(基本実習を終えた5-6年生2-4名、4週間)において、「ナラティブトレーニング合同実習」「パラレルチャート」を実施した。2019年度は7回実施した(計28名の医学生が参加)。実習終了後にはアンケートを施行した。ナラティブ・メディスンにおける主要概念は3つある。「注目」は物語能力の根幹で、目の前の対象に真摯に注意を向け、「表現」では認識したものを表現し、「参入」では表現されたものを共有し、関係を構築する。パラレルチャートを経時的に解析すると、医学生は患者との関係、また自己省察を通じて、心動かされており、注目、表現を経て参入できている学生もいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケートなどデータ収集は順調。解析がやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も実習中の学生を中心に取り組みを進め、成果を学会発表、論文発表していく予定である。「ナラティブトレーニング合同実習」では、物語能力の3本柱のうち「注目」「表現」のトレーニングを行い、目標は、病の体験を「物語」として考える、ことばを使って「意味」を考えるである。「パラレルチャート」は、「注目・表現・関係構築」のトレーニングで、目標は、患者さんとのやり取りを通じて、患者さんの多様なバックグラウンドに触れる、患者さんの気持ちを考えると同時に自分の気持ちもふり返るである。 新型コロナ流行にて、実習を実施できない期間もあるが、これまでのデータをまとめ、引き続き解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究打ち合わせ、海外出張が未実施となり、予定より使用額が減少した。 (使用計画) 引き続き、インタビューを含め、データ蓄積を行い、文字おこしなど外注を予定している。学会参加や、論文発表にも使用予定である。
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