研究課題/領域番号 |
18K10004
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
赤池 雅史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90271080)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | クリニカル・クラークシップ / 診療現場評価 |
研究実績の概要 |
クリニカル・クラークシップの実習週数を増やした新しいカリキュラムを履修する医学生を対象として、診療現場での新しい指導・評価方法を導入するために、miniCEXや診療手技(採血、縫合・結紮、手術手洗い・清潔手袋装着、心電図記録)の評価表案を作成した。また、日々の実習記録、振り返り、指導医からのフィードバックで構成される実習ログ・ポートフォリオの様式を整え、学外ならびに選択臨床実習から導入した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集した。この結果、2006年度に医療面接、身体診察、カルテ記載、プレゼンテーションで構成される臨床推論課題による臨床実習後OSCEを導入した以降、2011年度までは臨床実習実績は経年的に増加したが、それ以降は減少しており、臨床実習後OSCEの改革によるクリニカル・クラークシップの改善効果には限界があることが示唆された。一方、主成分分析では、学生の満足度を規定する因子として、臨床医として模範的な指導医、適切な指導体制、指導医から適切な指導が抽出され、学生の経験症例数との関係は乏しかった。これらの結果から、クリニカル・クラークシップの評価を臨床実習後OSCE主体ではなく、指導と一体となった診療現場評価を重視する方向へシフトすることが、教育効果の向上に寄与すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、クリニカル・クラークシップにおける診療現場指導・評価表案の作成、実習ログ・ポートフォリオ様式の策定とその導入を実施した。また、旧カリキュラムでクリニカル・クラークシップの履修を修了した6年次を対象としてアンケート調査を実施し、担当患者数、単独で病歴を聴取した患者数、単独で身体診察した患者数、カルテ記載した患者数、カンファレンスで症例提示した患者数、病状説明に立ち会った患者数等の臨床実習実績、病歴聴取、身体診察、カルテ記載、症例提示、医療手技、診療参加についての自己評価、指導体制・指導状況についての学生の評価、学生の満足度、学生の自由記載意見等のデータを収集し、得られたデータを用いて、2006年以降の各項目の経年的変化を明らかにした。さらに、主成分分析等によって、満足度を規定する因子を明らかにした。これらによって、新たな診療現場指導・評価を導入することによって、クリニカル・クラークシップの教育効果が向上する可能性を示すことができ、今後の研究の方向性の適切さを確認できた。これらは、すべて当初の研究計画に基づいて計画通り実施されていることから、現在までの研究の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は臨床実習週数を増やした新カリキュラムを履修する4~6年次に対して、miniCEX、実習ログ・ポートフォリオ、指導者との振り返りセッションの導入等の新しい指導・評価方法を本格的に導入する。履修を修了した6年次を対象としては、前年度までに実施した項目に加えて、実習週数の増加や新しい教育手法の導入についての学生による評価を調査項目に追加したアンケート調査を実施する。このデータを用いて、各項目の結果について前年度までとの比較検討を行う。さらに、多変量解析や主成分分析によって、満足度を規定する因子、学修成果を規定する因子を明らかにする。特に実習週数増加や新しい教育手法との関連性について検証を行う。また、自由記載によるテキストデータをもとに質的分析を行うことにより、学生の意見の傾向と特徴を明らかにする。これらによって、新しいカリキュラムや教育手法が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにするとともに、これらの問題点や課題を抽出して、その改善策を作成し、次学年の指導・評価方法に新たに導入する。2020年度はクリニカル・クラークシップの週数を増やした新カリキュラムの履修を修了した6年次に対して、同様の履修修了後調査を継続し、前年度までと同様の分析を行うことにより、新たに導入した改善策が、学生の満足度や学修成果に及ぼす影響を明らかにする。これによって、課題の解決策の有効性を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
クリニカル・クラークシップにおける重要な診療科のひとつである循環器内科に関して、教育を含めた最新の情報を入手するため、平成31年3月29日~3月31日に横浜市で開催された第83回日本循環器学会学術集会に参加した。年度末であったため、支払いが翌年度分となった。
|