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2018 年度 実施状況報告書

医療安全管理業務と連携した「臨床倫理サポート」体制の病院内モデル構築

研究課題

研究課題/領域番号 18K10007
研究機関宮崎大学

研究代表者

板井 孝一郎  宮崎大学, 医学部, 教授 (70347053)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード臨床倫理支援 / 臨床倫理コンサルテーション / 臨床倫理コンサルタント / 臨床倫理アドバイザー / 医療安全管理
研究実績の概要

現場の医療安全管理者が、臨床倫理支援と医療安全管理業務の関係性についてどのような問題意識を持っているのかを調査し、両者の関係性を明らかにすることを目的とし、無記名自記式アンケート調査を実施した。九州厚生局ホームページに公開されていた「施設基準の届出状況等の報告」一覧より、宮崎県内の医療安全対策加算ⅠもしくはⅡの施設基準を取得している医療機関52施設を抽出し、それらの医療機関に勤務している専従もしくは専任の医療安全管理者を対象としアンケートを送付、31施設より回答を得た(回収率59.6%)。
質問肢としては、①十分な医療・ケアを提供することができていないこと、②主治医の治療方針に関すること、③終末期医療に関すること、④インフォームドコンセント」に関すること、⑤患者の自己決定に関すること、⑥守秘義務に関すること、⑦プライバシーに関すること、⑧身体抑制に関すること、⑨家族の支援に関すること、⑩チーム医療に関すること、⑪医療従事者の態度や発言に関すること、以上の11項目について、「A.医療安全管理業務全般の中で問題を感じること」「B.インシデント事例から問題を感じること」「C.医療安全管理業務の中で相談を受けること」の3つの視点に関し、AとCについては「頻繁にあった」「時々あった」「ほとんどなかった」「全くなかった」の4件法で、Bについては「頻繁に感じる」「時々感じる」「ほとんど感じない」「全く感じない」の4件法で回答を得た。Aに関して「頻繁にあった」の回答が最も多かったのは④19.4%、Bに関して「頻繁に感じる」の回答が最も多かったのは①22.6%、Cに関して「頻繁にあった」の回答が最も多かったのは⑪9.7%であった。上記の他に、「病院機能評価受審の有無」、「医療安全管理者の配置条件の違い(専従か専任か)」等の基礎データとのクロス集計を進行中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

科研費申請の段階では、平成30年度に実施する連結不可能匿名化自記式アンケート調査の概要として、平成24年度科研費「基盤C」にて実施した申請者が勤務する大学病院を対象としたアンケート調査を踏まえつつ、さらに申請者が把握している倫理コンサルテーションに取り組んでいる宮崎県内外約10箇所の大学病院・市中病院において実施する。医療従事者(看護師、医師、作業療法士、理学療法士、ソーシャル・ワーカー等、職種は問わない)を対象としアンケート用紙を送付、回答されたアンケートの定量解析および、自由記述欄については質的分析を行うこととしていた。
しかし、今回の研究テーマは「医療安全管理業務」との連携を目的としたものであることを鑑み、調査対象も10箇所に限局せず、また多職種ではなく、安全管理加算ⅠもしくはⅡの施設基準を取得している医療機関とし、職種も専従もしくは専任の医療安全管理者へと変更をした。そのため当初計画に変更を加えたことから、「(1)当初の計画以上に進展している」を選択しなかったが、本来の研究目的からはより適切な変更であったと自己点検としては判断し、「(2)おおむね順調に進展している」とした。

今後の研究の推進方策

令和元年度(平成31年度)は、当初計画では、前年度の調査結果を、米国・英国で期待されているコア・コンピテンシーの内容(特に「3つのカテゴリー」)と比較対照し、その共通性と日本の医療現場からのニーズの独自性に関する考察を行うとしており、その際、渡英時にはオックスフォード大学EthoxセンターUK Clinical Ethics Networkのメンバーとの討議、及び現地のいくつかのNHS trustの訪問調査を行い、特にPersonal Characterの内容、及び倫理相談に訪れた相談者に対するコミュニケーション・スキルと、倫理的推論(moral reasoning)の育成トレーニングのあり方に関する検討にも着手する予定である。
そのためにもまずは、平成30年度の調査結果に関し、残っているクロス集計をはじめ考察を終了させ、米国・英国の倫理コンサルタントのコアコンピテンシーと比較しつつ、米英には必ずしも明確化されていない「医療安全管理」との関係性や、本邦独自の臨床倫理コンサルテーションにおける構造的因子や、コンサルタント個人のスキル特性を明確化していく。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、日本の医療現場における臨床倫理サポートのニーズの実状を、単に「必要である」という把握に留まるのではなく、倫理コンサルテーションを担う人材、すなわち「臨床倫理コンサルタント」に対し、現場スタッフが具体的にどのような資質や能力を期待しているのかについて、連結不可能匿名化自記式アンケート調査、および英国オックスフォード大学Ethox Centre UK Clinical Ethics Networkメンバーに対するインタビュー調査、また現地のNHS trustの訪問調査を行うことによって明確にすることを目的としている。申請段階では、初年度の平成30年度ではなく、2年目の令和元年度(平成31年度)に渡英すると計画を立案していた一方で、執行予算につき1年目(平成30年度)の方に計上していたため、結果として次年度に繰り越すことになった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Evaluation and Outcomes of Multidisciplinary-Reported Incidents Regarding Patient Safety Management at Special Functioning Hospital in Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Takanori Ayabe, Masaki Tomita, Manabu Okumura, Shigeko Shimizu, Eiko Uchida, Yukari Miura, Koichiro Itai, Kunihide Nakamura
    • 雑誌名

      Open Journal of Safety Science and Technology

      巻: No.8 ページ: 107-136

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] リハビリテーション領域における臨床倫理に関する意識調査2018

    • 著者名/発表者名
      大橋妙子、板井孝一郎、米澤ゆう子
    • 雑誌名

      人間と医療

      巻: No.8 ページ: 14-22

    • 査読あり
  • [学会発表] 重篤な小児神経疾患における倫理的推論のアポリア2018

    • 著者名/発表者名
      板井孝一郎
    • 学会等名
      第60回日本小児神経学会学術集会
  • [学会発表] 臨床における倫理 -現場実践に活かす「臨床倫理」の考え方2018

    • 著者名/発表者名
      板井孝一郎
    • 学会等名
      第59回日本神経学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 「書くこと」を目的としない宮崎市「わたしの想いをつなぐノート」2018

    • 著者名/発表者名
      板井孝一郎
    • 学会等名
      日本在宅医学会第20回記念大会
  • [学会発表] 倫理的推論(ethical reasoning)のプロセス -「4分割法」の長所と短所2018

    • 著者名/発表者名
      板井孝一郎
    • 学会等名
      日本医療コンフリクト・マネジメント学会第7回学術大会

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公開日: 2019-12-27  

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