研究課題
昨年度実施した単純集計の他に、残されていたクロス集計や要約統計量(特に標準偏差と分布)の算定を実施した結果、31施設(回収率59.6%)の回答者全体では、臨床倫理問題11項目の中で、次の3項目「①十分な医療・ケアを提供することができていないこと」「⑪医療従事者の態度や発言に関すること」「⑩チーム医療に関すること」は、「医療安全管理業務全般で感じる頻度」、「インシデント事例で感じる頻度」、「医療安全管理業務の中で相談を受ける頻度」以上<3つの視点>のいずれにおいても共通して上位3番目までに位置していた。①と⑪は、病院機能評価認定の有無に関わらず共通して上位であった一方、認定の有無で違いがみられたのは、「⑩チーム医療に関すること」「⑧身体抑制に関すること」であった。⑩については、認定施設では、非認定施設に比して、<3つの視点>のいずれにおいても上位であったが、⑧については、認定施設では、非認定施設に比して、<3つの視点>のいずれにおいても下位であった。これらのことより、病院機能評価の評価項目となっている「チーム医療」については、認定施設では、意識的にチーム医療に関わっているため臨床倫理問題として感じる頻度が高いと推察された。また、認定施設においては、「身体抑制」については認定を受ける中で体制が整備されていくことで臨床倫理問題として感じる頻度が他の項目より低くなったと推察される。医療安全管理者の配置条件の違いについての結果も同様で、配置条件の専従・専任に関わらず、「①十分な医療・ケアを提供することができていないこと」「⑪医療従事者の態度や発言に関すること」については、医療者として重要なことと認識している事が推察された。医療の質を高める上で臨床倫理と医療安全管理は独立したものではなく、相互に補完し合う関係にあるといいうる。
2: おおむね順調に進展している
昨年度確認した、単純集計のみならず、クロス集計や要約統計量(特に標準偏差や分布)に関しては、当初予定どおり解析も終了し、結果と考察を行うことができ、一定の結論を導き出すことはできたという点では「順調」であるといいうるが、一方で、米国・英国で期待されているコア・コンピテンシーの内容(特に「3つのカテゴリー」)と、今回の「医療安全管理業務と臨床倫理支援」に関するアンケート調査結果から浮かび上がってきたスキルとの比較対照、さらにはその共通性と日本の医療現場からのニーズの独自性に関する考察が、まだ十分実施できていないことから「おおむね順調」と自己判定した。残された後者の課題は、最終年度で完遂する予定である。
上述したように、研究の最終年度として、米国・英国で期待されているコア・コンピテンシーの内容(特に「3つのカテゴリー」)と、今回の「医療安全管理業務と臨床倫理支援」に関するアンケート調査結果から浮かび上がってきたスキルとの比較対照、さらにはその共通性と日本の医療現場からのニーズの独自性に関する考察を行う。その際、残念ながらCOVID-19に伴い計画していたオックスフォード大学Ethoxセンターへの渡英は非常に難しい情勢となったため、オンラインによる情報収集等の工夫を試みつつ、コア・コンぴてんしーにおけるPersonal Characterの内容、及び倫理相談に訪れた相談者に対するコミュニケーション・スキルや、倫理的推論(moral reasoning)の育成トレーニングのあり方に関する検討、また米英においては必ずしも明確化されていない「医療安全管理」との関係性、コンサルタント個人のスキル特性も明確化していく。
昨年度未実施となった英国オックスフォード大学Ethoxセンターメンバーに対するインタビュー調査、また現地のNHS trustの訪問調査について2020年2月に予定していたが、COVID-19の世界的流行のため中止せざるを得ず、急遽オンラインでの情報収集等の工夫を行うための予算執行に切り替えたが、5万強の残額が出てしまい、これについては来年度に繰り越すこととした。
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末梢神経
巻: 30 ページ: 24-29
BMJ Open
巻: 9 ページ: e026579
人間と医療
巻: 9 ページ: 25-35