臨床倫理と安全管理の関係性については、2016年に実施した先行研究(平成27年度基盤研究)の結果、ASBHが求めている「知識・スキル・態度」に関連して、「現場スタッフからの声のかけやすさ」という「態度」の問題が、倫理に関する知識やスキルよりも「個人の振る舞い・態度・雰囲気」というキーワードとして重要視されていることが判明、「他部門との連携」という点では、安全管理関連部署との連絡体制を重要視している傾向が認められた。「患者安全」としての安全管理こそが、「安全・安心な医療」として質の高い「倫理的な医療」につながるという着眼点を継承し、本研究においては、宮崎県内の医療安全対策加算Ⅰ又はⅡの施設基準を取得している52施設の専従または専任のGRMを対象とし、無記名自記式アンケート調査(回収率:59.6%)を実施した。その結果、医療安全管理業務を遂行する中で、臨床倫理と医療安全管理について「関係がある」と回答した施設は31施設中30施設、「関係がない」と回答した施設は0施設、無回答が1施設であった。医療倫理の根幹ともいいうる「ヒポクラテスの誓い」にある「Do no harm(害を為すな)」という精神は、今日の4大倫理原則における「無危害(non-maleficience)」原則そのものであり、医療安全を推進する上での根幹となる。「害のない」安全で安心な医療こそは「倫理的な医療」そのものであることに着眼し、臨床倫理の視点をもち医療安全を推進することは、医療の質を高める上での重要な鍵であること、しかし、実際に推進していくには個人の努力だけでは困難であって、組織防衛優先ではなく倫理的視点と患者安全を重視した組織風土作り、組織体制づくりに取り組む重要性について、「臨床倫理と医療安全管理の関係性についての研究」(人間と医療、No.10、2020年)等において発表した。
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