研究課題/領域番号 |
18K10009
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩穴口 孝 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (80619198)
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研究分担者 |
村永 文学 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (00325812)
宇都 由美子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (50223582)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症 / 医療資源投入量 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、認知症の有無や程度が急性期入院診療における医療資源の投入量にどれほどの影響を与えるか確認を行った。 対象は2017年8月から2018年3月にA大学病院を退院した患者9,576名とした。DPC調査データの様式1の診断情報、およびEFファイルのアルツハイマー型認知症治療薬の有無から認知症患者を識別した。認知症の有無による退院先、退院時転帰、平均在院日数に与える影響の確認を行った。 認知症を有する患者は141名であった。認知症患者は認知症を有さない患者と比べ、退院先で「他の病院・診療所への転院」の割合が高く、退院時転帰では「不変」の割合が高かった。この結果からは、退院援助や社会復帰支援としての人的医療資源投入量がより必要とされることが示唆された。認知症が平均在院日数に与える影響を確認するために、同一DPCで比較を行ったところ、DPCによっては認知症の有無により平均在院日数に差がみられるものもあるが、一定の傾向は見受けられなかった。認知症患者に対する看護師の負担感や計画通りに治療が進まないという報告はあるものの、認知症が在院日数に与える影響は確認できなかった。 A大学病院の認知症患者数は厚生労働省の発表に基づく推計患者数と比較すると明らかに少なく、急性期医療機関の診療データでは認知症患者を十分に識別できないという問題点が明らかになった。急性期医療機関では認知症が主傷病となることがなく、また、認知症に対する投薬や検査も少ないため、認知症という診断名が病院情報システムに蓄積されないと考えられる。急性期医療機関であっても、認知症の有無が治療・看護ケアの提供といった医療資源の投入量に影響を与えると考えられており、その影響量を明らかにするためにも、認知症患者を識別するための新たな方法について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の研究は、急性期医療機関の認知症患者が退院先や転帰、平均在院日数に与える影響を確認した。提供されるケアの内容や量、診療コストといった医療資源の投入量の定量的評価についても分析予定であったが、診療データを用いた急性期医療機関における認知症患者の識別手法の開発という新たな課題が生じたため、当初の予定よりやや遅れた状態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究で課題となった認知症患者の識別手法について検討を行い、認知症の有無によって投入される医療資源の内容・量の差を明らかにする。平均在院日数が2週間以内という急性期医療機関において、認知症の「診断」までに至るには限界がある。看護記録や看護ケアの実施入力といった看護ケアデータから認知症患者を判別できるような仕組みについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行の過程で新たな課題が生じたため、そのデータ収集・分析のために、本年度の購入予定であった物品の購入や学会参加を取りやめ、翌年度の作業用の物品購入・人件費に充てる計画とした。
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