研究課題/領域番号 |
18K10013
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
古屋 博行 東海大学, 医学部, 教授 (10276793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 人畜共通感染症 / ESBL / SARS-CoV-2 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、動物にある抗菌剤を使用して放出される耐性菌または耐性決定因子に人が曝露される経路として、食用動物の食肉調理時に曝露が起こる確率から人への感染リスクについて推定を行った。家禽類における薬剤耐性カンピロバクターの人への感染リスクは、鶏肉等におけるCampylobacterjejuni/coliについて食品健康影響評価のためのリスクプロファイル(2018年5月)も参考にし検討を行った。その結果、一年間での感染リスクは、中央値0.0001、平均値0.0002、標準偏差0.0004の対数正規分布を持つことを示した。令和2年度は、(1)ESBL産生/プラスミッド性AmpCを持つ大腸菌の市中感染リスクについて、オランダにおける研究ではR0=0.63と推定しているが、本邦における推定値について検討中である。(2)ESBL産生大腸菌について、環境、人、動物の間での遷移について3つの常微分方程式を用いた簡易モデル(Bootonらの報告を参照)を使用して検討したが、パラメータはタイのものにとどまっており、本邦におけるパラメータの参考になる文献を調査中である。(3)新型コロナウイルス対応に伴う緊急研究として、環境表面から口、鼻、眼の粘膜を通じた感染リスクについて、特に眼の粘膜における増殖を仮定したモデルについて検討し、従来の鼻涙管を通じて咽頭において感染を仮定したモデルと比較した結果、眼の粘膜での増殖による感染リスクの方が高かった。この結果をTokai J. Exp. Clin. Med. Vol45(4), 2020.に報告した。また、2021年3月開催の第91回日本衛生学会総会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和二年度は新型コロナウイルスによる第2波、第3波によるコロナ禍対応として、本医学部付属病院でも、医療安全面での業務、新規適応外医薬品の審査業務等、研究代表者の兼務である病院業務が輻輳し、本研究のエフォートが少なくなった。特に、COVID-19患者挿管時にエアロゾル発生が問題となり、その対策立案として本医学部麻酔科が実施したプラスチック製のエアロゾルボックスとビニール製の覆いに関する比較実験研究にも参加、ビニール製の覆いの方が周囲の汚染が低い可能性を示した。この結果の報告が、J. Clin. Anesth. 2021 Mar14;71:110253に掲載された。以上、新型コロナウイルス関連の研究を優先して行いその成果を早期に公開出来たが、本研究計画の遂行に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本邦でもESBL産生大腸菌が家畜、食品で認められているが、人で認められるESBL産生大腸菌との関係は明らかではない。一方、ペットで認められるESBL産生大腸菌がヒトで認められるものとの関連性が報告されている。人、環境、動物の間のメタポピュレーションモデルの他に、プラスミッド伝搬による耐性菌発生モデル等焦点を絞ることにより、年度内に成果が出るよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対応で学会開催がWeb開催となり、旅費が不要になった。一部のシミュレーションソフトウエアが大学の全キャンパス対象のライセンスに切り替わったため、更新料が必要なくなった。今年度の研究費については、今年度の統計、シミュレーションソフトウエアの更新料と学会参加費、遠隔でのWeb会議のスムーズな運用に必要な用品購入にあてたい。
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