研究課題
医科手術における周術期口腔(機能)管理(広義の口腔ケア)という概念は、平成24年度の歯科診療保険収載により広く認識されるようになった。従来、病院歯科口腔外科では、外科医や麻酔科医が口腔の問題を認識した場合、医科からの無作為依頼方式で、手術周術期の口腔衛生や咀嚼・嚥下などの口腔機能を管理してきたが、われわれは手術を受けるすべての患者に対し包括管理する方法を模索してきた。そこで、「口腔トリアージ法」という、周術期センターにて全患者に対し一定の評価基準を用いて歯科衛生士による口腔チェックを行い、必要性を判定したうえで麻酔科医に申告し、処置を歯科・口腔外科へ依頼するシステムを考案し2011年より運用している。平成27~29年度科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究;課題番号15K15254)により精度を検証された評価基準による、口腔トリアージ法を用いた口腔機能管理の術後肺炎予防効果は、従来の「医科からの依頼方式」による口腔管理と比較して優れているか否かを検討することが、本研究の目的である。前年度以前の研究成果における追加データとして、がん手術患者において、トリアージを行い口腔管理を行った群とそうでない群の前向き研究で、口腔管理群は、肺炎発症を抑制することがわかった。今までのデータは、トリアージ開始前と開始後の比較であったが、実際の口腔管理の有無によっての比較でも、肺炎抑制効果があることが証明された。研究期間を通じて実施した研究成果としては、従来法(医師が無作為に口腔ケアを依頼する)に比べて口腔トリアージ法は、肺炎抑制効果は劣らず、トリアージを専門性の高い職種が行うことで、手術患者の20%と少ない人数を口腔管理することによって、手術患者全体での肺炎発症率を1%以下にすることが可能であり、画期的なシステムであることが証明された。
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