研究課題/領域番号 |
18K10022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三浦 りゅう 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任助教 (20506414)
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研究分担者 |
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, センター特別招へい教授 (80112449)
宮下 ちひろ 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任准教授 (70632389)
湊屋 街子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (50733367)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境疫学 / 有機フッ素化合物 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 胎児期曝露 / 発育体格 / 臍帯血 |
研究実績の概要 |
環境要因が次世代影響をもたらすメカニズムとして、DNAの化学修飾(エピゲノム)に基づく後天性遺伝子制御システムの関与が注目されている。本研究は、胎児期の環境化学物質曝露がエピゲノム変化の1つであるDNAメチル化変化を引き起こし、生後の発育に影響を及ぼす可能性を実証的に示す。具体的には、①難燃剤などで多用される有機フッ素系化学物質の胎児期曝露に起因する臍帯血DNAのメチル化変化をエピゲノム網羅的解析により特定し、特定したメチル化変化の中で、胎児期の発育・成長に影響を与えるメチル化変化を明らかする。さらに、③出生時から12歳までの体格に与える影響を調べ、メチル化変化の影響が何歳までの発育・成長に及んでいるかを出生前向きコホート研究により明らかにする。エピゲノムを介した胎児期環境による健康影響を引き起こすメカニズムが解明されれば、次世代の健康リスクの軽減や影響を減らすことに大きく貢献できる。 今年度は、①曝露に起因するメチル化変化の中で、胎児発育に影響を及ぼすメチル化変化を明らかにするため、エピゲノム網羅的解析により特定した有機フッ素系化合物の胎児期曝露に起因する臍帯血DNAのメチル化変化について、生後の発育・成長につながる出生時アウトカムとして、出生時体格(体重・ポンデラル指数)、および、脂質代謝の指標となるアディポカインの臍帯血中濃度との関連を統計的に解析した。また、② 大規模コホートの生後アウトカム追跡として、平成30年度に12歳に達する児の家庭にアンケート調査を実施し、小学校1年から6年までの学校健康診断記録から2,267名の学童期体格(体重と身長)データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピゲノム網羅的解析により明らかになった有機フッ素系化合物の胎児期曝露に起因する臍帯血DNAのメチル化変化と出生時体格、および、臍帯血中アディポカインレベルとの関連解析は順調に進んでいる。さらに、小学校1年から6年までの学校健康診断記録から、予想していた1043名を上回る2,267名の学童期体格(体重・身長)データを得ることが出来、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
①出生時アウトカムへの影響が明らかとなったメチル化変化について、曝露とアウトカムとの関連への介在の大きさをMediation Analysis(Int J Epidmiol 2016)により検討する。 ②結果の妥当性をパイロシークエンサーまたは次世代シークエンサーによるメチル化解析により検証する。 ③12歳までの体格情報が得られた対象者の臍帯血DNAの抽出を行う。曝露と出生時アウトカムへの関連が認められたメチル変化部位についてパイロシークエンサーによりメチル化解析を行う。得られたメチル化率と出生から12歳までの各年齢で得られた児の体格との関連を解析し、何歳までの生後発育・成長に臍帯血DNAメチル化変化が影響を及ぼしているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)有機フッ素化合物とDNAメチル化および出生時アウトカムとの関連は、すでに取得したデータを用いて解析を行い、費用が最低限に抑えられた。また、予定したパイロシークエンサーのアップグレードは、別の研究費により行うことができ、今年度の使用がなくなったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 新たな曝露測定およびメチル化率の測定に必要な実験用試薬品費用、および、バイオインフォマティクス解析費用として使用する。
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