研究実績の概要 |
環境要因が次世代影響をもたらすメカニズムとして、DNAの化学修飾(エピゲノム)に基づく後天性遺伝子制御の関与が注目されている。申請者らは、環境化学物質、特に難燃剤などで多用される有機フッ素化合物への胎児期曝露がDNAメチル化変化を介して生後の発育に影響を及ぼす可能性を実証するため、以下の研究を行った。大規模コホートの12歳に達した児の家庭に調査を実施し、小学校1年から6年までの学校健康診断記録から3,221名の学童期体格データを得た。そのうち、胎児期有機フッ素化合物の曝露データがそろう1,329名を対象に、小学6年生時の肥満度=(実測体重-標準体重)/標準体重×100(日本小児内分泌学会)が20以上の肥満傾向(n=31)と曝露との関連をロジスティック回帰により解析した。11種の有機フッ素化合物のうちPFOAで有意な負の関連(OR=0.23, 95%CI(0.06, 0.89))が見られた。また、肥満傾向児218名、および、肥満傾向でない児282名、計500名のケースサブコホート集団を抽出し、イルミナ社のInfinium MethylationEPIC BeadChipを用いて臍帯血DNA約85万CpGのエピゲノム網羅的メチル化解析(EPIC)を行った(別研究費)。得られたシグナルデータについて、クオリティーコントロール、標準化、バッチ間補正を行い、85万の標準化メチル化データを構築、メチル化率と小児期肥満との関連をロバスト線形回帰を用いて解析した。その結果、多重解析補正後の有意水準FDR q < 0.05を満たすメチル化変化は検出されなかった。現在、メチル化変化、小児期肥満、胎児期有機フッ素系化合物曝露との関連を詳細に検討するため、ケースサブコホート集団において曝露測定を進めている。
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