研究課題/領域番号 |
18K10023
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
細田 正洋 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (30457832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラドン / トロン / 散逸率 / 放射線計測 / ZnS(Ag)シンチレータ / 光電子増倍管 |
研究実績の概要 |
ラドン・トロンの高潜在地域の特定のために、可搬性に優れ、いかなる測定環境にも対応可能かつ短時間で散逸率の評価ができる測定を開発する。本年度は、地元企業の協力を得てα線の検出器であるZnS(Ag)シンチレータと6本の光電子増倍管を備えた可搬型測定器を制作した。地表面から散逸するラドンやトロンガスの蓄積容器の容積は約5 L(面積:約0.05 m2)である。観測地域によっては高温環境もあり得るため、検出系の断熱も考慮した。総重量は10 kg未満である。また、6本の光電子増倍管から得られる信号を合算した計数値を記録するスケーラも制作した。なお、合算した計数値のみでなく、それぞれの光電子増倍管からの計数値の記録される。スケーラでは、測定年月日、時刻、緯度経度、気温、気圧及び湿度も同時に記録され、データはcsv形式で出力できるようにした。また、スケーラ上でディスクリレベルの調整が可能となるようにした。 光電子増倍管に印加する至適電圧を評価した。性能評価には、密封Am-241線源を用いた。各光電子増倍管の中心に線源が配置されるようにアクリル板を用いて線源台を作成した。それぞれの領域の中心に線源を配置し、計数開始電圧から100 V間隔で印加電圧を1200 Vまで上げていき、各電圧で1分間隔で計数値を5回ずつ計測した。得られた電圧特性曲線から至適電圧を1000 Vと決定した。なお、この印加電圧でのパルス波高値は2.5 Vである。ノイズレベルは0.3 V程度であったが、保守的に考えディスクリレベルを0.5 Vとした。 次に、印加電圧を1000 Vに設定した際の5回の計数値の平均値と密封Am-241線源の放射能を用いて計数効率(感度)を評価した。6つの領域でそれぞれ評価された計数効率は28.1%から28.6%であり、各測定領域での計数効率は非常に安定していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度中に可搬型ラドン・トロン散逸率測定器の制作が完了した。さらに、測定器の性能評価項目として計画書に挙げた印加電圧と計数効率を決定することができた。制作した測定器の計数効率は非常に安定していることが確認できたため、次年度は予定通りの計画で進めることができると判断したため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、野外での使用を考慮して、恒温槽を用いて温度を0℃付近から40℃程度まで変化させたときの計数効率を評価する。さらに、土壌試料(花崗岩風化土壌など)と野外観測(青森県内、沖縄県、岐阜県等)によって計数値からラドン・トロン散逸率への換算係数を評価する。ステンレス製の蓄積容器と市販のラドン・トロンモニタを用いて評価したラドン・トロン散逸率を基準値とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に計画している沖縄県や岐阜県内での野外観測の打ち合わせを本年度に実施する予定で旅費を計上していたが、自助努力により他の予算を使用して打ち合わせを実施したため、予定よりも旅費の使用が抑えられた。ここで生じた差額分については、次年度の野外観測によって評価予定の換算係数に係るデータを蓄積するのための旅費として使用する予定である。
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