研究課題/領域番号 |
18K10024
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長崎 啓祐 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70419315)
|
研究分担者 |
沼倉 周彦 山形大学, 医学部, 講師 (00400549)
入月 浩美 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (80793926)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 新生児マススクリーニング / 先天性甲状腺機能低下症 / 中枢性甲状腺機能低下症 / 遺伝子解析 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本邦における中枢性甲状腺機能低下症(以下中枢性CH)の臨床像および分子基盤を明らかにすることである。本研究の結果を踏まえ、今後本邦においてFT4スクリーニングを導入すべきか否か議論していく予定である。 研究成果:2020年度は、引き続きTSH単独欠損症の分子遺伝学的解析につき検討をすすめた。TSH単独欠損症の遺伝学的解析(G2018-0007)として倫理承認を取得後に、対象症例の所属する施設より検体を収集した。最終的に解析対象者15例で、すでに他施設で遺伝子解析を行ってていた症例が6例、残り9例全員の遺伝子解析を完了した。本研究による成果を、第94回日本内分泌学会学術総会で発表し、現在論文化準備中である。本邦において、中枢性CHの約半数はIGSF-1遺伝子異常であること、そのほとんどはFT4スクリーニングを行っている地域から出生した児であることが明らかになっている。FT4スクリーニングを実施してない地域では、中枢性CHが見逃されている可能性が示唆された。また原因不明例においては、家族例1家系に対してトリオエクソーム解析を行ったが、病因と考えられる遺伝子の絞り込みは行えていない。 中枢性CHの臨床像の調査については、本邦で行われた二次調査のまとめからすでに治療状況や発達状況を確認している。また共同研究者の在籍する山形県ではFT4スクリーニングを実施しており、2020年度は7498件の検査を行ったが明らかな中枢性CHの患者は存在しなかった。2009年出生でFT4スクリーニング陽性となった先天性中枢性甲状腺機能低下症でIGSF1遺伝子異常が判明した患者さんの弟と母親の遺伝子解析の結果,弟と母親の双方に同位置の遺伝子変異を検出した.弟の甲状腺機能低下は軽度で新生児マススクリーニングでは陰性であった.母親の甲状腺機能は正常であった.IGSF1はX染色体上に存在するため,母親は無症候性の保因者と考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TSH単独欠損症の分子遺伝学的解析の検討については予定通りに終了した。中枢性CHの臨床像の調査については、すでに行った全国調査の二次調査で対応可能と判断している。本事業における成果の論文投稿が行えておらず、次年度に研究費を繰り越すことになった。
|
今後の研究の推進方策 |
TSH単独欠損症の分子遺伝学的解析については、今年度までの成果を論文化する予定である。原因不明例において、特にエクソーム解析例において、原因遺伝子の絞り込みを行っていく。FT4スクリーニングによる中枢性CHの発見状況においては、過去に遡って山形県でのFT4スクリーニングの現状をまとめていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析対象者の検体採取に時間を要し、TSH単独欠損症の分子遺伝学的解析結果に関する成果の論文化が間に合わなかった。次年度に成果を公表する予定である。
|