研究課題
福島原発事故後12年を迎えた日本では、放射線の作用が腫瘍発生制御の関心事で基礎的研究の重要性が増している。本研究の目的は、体内残留放射能が内部被ばくとして人体に及ぼす影響を分子病理学的に検出し組織細胞のマイクロドジメトリーとの関連を検討すること(Patho-マイクロドジメトリー)である。私達は長崎原子爆弾のPu-239由来α粒子の飛跡を近距離被爆者の病理標本上に確認し、内部被ばくの科学的証拠を初めて論文発表した。外部被曝線量の評価法では、被爆者の最も高い骨髄組織吸収線量は0.560mGy/y, 生存期間68日における累積線量は0.104mGyと僅かで人体に影響する値ではないと考えられたが、α粒子飛跡周辺細胞では粒子が細胞核を通過する際の局所的線量は高線量(血管内皮細胞で 3.89Gy、肝実質細胞で1.29Gy)と算出された。内部被ばくは生物学的半減期・物理学的半減期によって被爆後人体内から急速に減衰することから生存被爆者での残存放射能検出は不可能である。原爆からの中性子線で放射化され、内部被ばくで主要な放射性Mn-56が特定された。「広島原爆入市1日目の入市被爆者の死亡率が高い」ことより、放射化された土中のMnO2微粒子が大気中に多量に舞い吸入することで早期入市者に内部被ばくが引き起こされたと想定し、カザフスタン国立核研究センター原子炉で照射を行い放射性MnO2をラットに暴露した。組織内沈着MnO2粒子近傍のβ線吸線量を指標として肺,小腸で遺伝子不安定性分子病理マーカーを探索した。放射化Mn-56微粒子による被曝吸収線量の高い肺では6時間から、180日後には肺炎、無肺、肉芽腫、出血など重篤な所見でエラスチンの異常沈着が見られ、Fe元素と共存するMn2+を肺標本上に同定し論文review発表し新聞掲載された。小腸標本でアポトーシス異常細胞とMn2+の同定結果を論文化した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Journal of radiation research
巻: 64 ページ: 738-742
10.1093/jrr/rrad047
Scientific Reports
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https://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/pathology/index.html